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夜桜能 第三夜 「二人静」

前夜に引き続き夜桜能です。
前夜⇒夜桜能 第二夜 「小鍛冶」

天気予報では雨のち曇りだったのですが…朝から降り続く雨がいっこうに止む気配がなく、それどころかだんだん本格的な雨になってきました。

で、案の定、会場変更に。靖国神社→新宿文化センター大ホール。

新宿文化センターはちょいとばかり不便な場所にあります。テンション下がります…。

3日間のうち本日だけ行かれた方は本当に残念でしたが、私は前日に靖国神社で観られているのでまだ救われます。能舞台じゃないっていうのは残念ですが、千人以上を収容できる能楽堂は存在しないのでいたしかたありません。

雨が本降りとなり新宿三丁目の駅に降り立つと、夜桜能のチラシを手に持ち行くべき方向を迷ってらっしゃる風のおばあさんが。案の定同じ目的地でしたので、おしゃべりしながら会場までご一緒しました。
義理でチケットをお求めになり横浜からおひとりでいらしたとのこと。お能は見たことはあるけどそう多くもないとおっしゃっていたので、今日の演目のことや出演者のことなどいろいろお話しました。せっかく遠くからいらしたのに夜桜じゃなくて残念。でも、楽しんで帰られていたらいいなぁ。

私にとって今日の目当ては夜桜というよりも「二人静」という演目でした。

静御前がとり憑いた菜摘女(ツレ)と、静御前自身の亡霊(シテ)が、鏡映しのように全く同じ装束を着て全く同じ舞を舞います。

能の場合、相舞は難しいものであるようです。

能面をかけていて視界が狭いため、相手の動きはほどんど把握することができません。音や気配でかすかに感じることぐらいではないでしょうか。

舞の型は決まっているので同じ舞を舞うことはできましょうが、ぴたりと合わせるのは非常に難しいと思われます。

動作が寸分の狂いもなく合ったとしたらそれこそ神技です。見えていないのですから。動きをぴったり合わせる必要はないのかもしれません。息は合っていなければいけないとは思いますが。

一卵性双生児のシテ方がいたとしたら、何もしなくても自然とぴたっと合わせることができそうな気がして、そういうチャンスが巡ってこないかなぁと思ったりもしますが。

まあ、今回も実際ぴったり合ってなかったということなんですが(笑)全く合ってなかったわけでもなく、シテの方がツレより若干ゆったりめに舞っていたのがちょうど良い感じでした。

伝承としてはぴたりと合わせて舞うということなんだろうな、と観ていて感じますが、少しずらす演出も面白そうだなと思ったりして。地謡とお囃子もあるので、そう単純にはいかないでしょうが、ほんの少し、0.5秒ぐらいずれていたら、静御前本人の重みが出るような気がします。

二人の静は全く同じ装束を付けていて扇の絵柄まで一緒なので、油断するとどっちがどっちなのかわからなくなりそう(笑)今回は身長差があったので、混乱しなかったですが。あと、年齢差がありましたので、やはりベテランはベテランらしく、若者は若者らしく舞われていたと思います。

ストーリー性はあまりない曲なのですが、とにかく舞が中心なので、やっぱり桜の下で見られた方が幽玄な雰囲気は楽しめたかもしれません。でも簡易能舞台でもお能はお能。出演者も豪華でとても楽しめました。

ちょっと能の相舞に興味が出てきました。
吉野天人という曲で天人揃という小書のときは天女がたくさん出てきて一緒に舞うので壮観です。私が観たのは7人でした。しかし数が多い方がごまかしがきくといったら聞こえが悪いですが観る方の視線が分散するので、やはり二人というのが一番難しいのだと思います。しばらく「二人静」にはまってしまいそうです。

狂言「蚊相撲」は、蚊の精が出てきて「ぷぅーーーーん」というセリフ(?)があったり、動きも面もユーモラスでとても楽しいお話です。最後に大名である野村萬さんが蚊になってしまい「ぷぅーーーーーん」と言いながら去るのがとても可愛かったです(*´▽`*)

帰宅時にはさらに雨が激しくなっていて、これで桜の花も見納めかな。来年の夜桜能を楽しみにしたいと思います!

奉納 靖国神社 夜桜能(第三夜)
4月3日(木)19:10~
@新宿文化センター大ホール(雨天会場)
舞囃子「安宅」
狂言「蚊相撲」
能「二人静」

舞台上には桜の花が飾られ夜桜能の雰囲気を演出
舞台上には桜の花が飾られ夜桜能の雰囲気を演出
新宿文化センター大ホール。2階席まであり約1800人収容できます。
新宿文化センター大ホール。2階席まであり約1800人収容できます。

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夜桜能 第二夜 「小鍛冶」

奉納 靖国神社 夜桜能(第二夜)に行って参りました。

第一夜は晴れて暖かく桜は満開で最高の薪能日和であったそうです。第二夜は夜が深まるにつれ雨が広範囲で降り出すという予報。

16時半に当日の会場が発表されます。雨天の場合は代替会場になりますが、とりあえず靖国神社での開催が決まり、胸をなで下ろします。あとは終演まで降らずに持ってくれることを祈るばかり。

昨年は桜の開花が異様に早く、夜桜能の時期にはほとんど散ってしまい葉桜能となってしまったのですが(笑)今年は満開真っ盛りの時期に当たりまさにどんぴしゃのタイミングです。

まず靖国神社に着いて驚いたのは、花見客の多さ!レジャーシートを敷いて宴会している人々や屋台もたくさん出ていて昨年とは全然違う雰囲気に面食らいました。屋台から食べ物の美味しそうな匂いが漂ってきまして、そっちにふらふら行ってしまいそうになります(笑)

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昨年の夜桜能。花見客などおらず閑散としている。

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それが今年はこのように!
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連なる屋台と花見をする人々。

さて開場時間となり境内に入ります。一般の参詣客が18時からは境内に入れなくなり残念そうに表門の写真を撮っていました。

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開場前。行列する観客達。
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一般参詣客は18時以降入れず立ち尽くす。中には当日券を買って入る人も。

まずは無料の雨ガッパが配布されました。有料ですがひざかけレンタルやイヤホンガイドもあります。昨年も感じましたが、この公演はサービスやスタッフの対応がとてもきめ細かく、観客への気配りが行き届いていてとても気持ちが良いです。

屋外能の場合、寒いのに簡易トイレだったりして、お手洗いに行くのを躊躇しがちなんですが、ここの場合は参集殿のきれいなトイレが使えるのでとても快適です。

千円でプログラムを購入。桜色の表紙のしっかりしたプログラムです。能の詞章も載っています。

プログラムも桜色~♪
プログラムも桜色~♪

境内に入りますと、すぐに能舞台がありますが、わぁーーーー!予想通り桜が満開だぁ!!(*´▽`*)♪

能舞台は120年の歴史があり黒々としていて荘厳な雰囲気が漂います。舞台上に散る桜の花びらがまた風流であります。

脇正面席4列目です。二千人ぐらい?は収容できると思われる野外能。後ろの方では雰囲気は楽しめてもお能自体はあまり見えないと思い今回もSS席を奮発しました。

最初に火入れ式があります。4人の火入れ奉行が裃姿で松明を携え厳かに登場、本舞台の左右に設置された薪に御神火を灯します。薪のすぐそばの席で観ていましたが、なかなかつかず最後にボッと音をたてて超特大の炎が上がったので私は思わずぅわぉっ!と声を出してしまい…周りの方ゴメンナサイ_(_^_)_

屋外で声が後方まで届きにくいのでスピーカーが設置されています。演者はワイヤレスマイクを仕込んでいるようです。昨年はスピーカーから聞こえる声が違和感でしたが、慣れたのか今年は特に気にならず。

舞囃子「三井寺」。桜の花びらが舞う中で裃姿のシテが舞うのを見るのは風雅なものです。もうすっかり江戸城の将軍様気分です。

狂言「宗八」。野村万作さん、萬斎さん親子がご出演。元僧侶だった料理人と、元料理人だった僧侶がそれぞれ主人に魚を料理することと経を読むことを命じられますが、お互い新米のため思うようにできず、それぞれが教え合うことを提案しますが、しまいに役割を交代してしまい、主人に怒られるというお話。

主人が帰ってきた時に慌てて魚を持ったままお経を読んだり、経典の巻物で魚を切ろうとしたりするシーンはドタバタしていてとても楽しい♪ 万作・萬斎親子とても可愛かったです(*´▽`*)

能 「小鍛冶」。三条小鍛治宗近(ワキ)が一条天皇より御剣を打つよう勅命を受けますが、相槌を打てる者がいないのでお引き受けできないと断ります。相槌とは刀工の助手ですが、刀工と同等の力量を持つ者でないと勤めることができないのです。不思議な童子(前シテ)が現れ、中国や日本の名刀奇譚を物語り自分が相鎚を勤めようと約束して消えます。宗近は刀を打つことを決心し仕事の準備をしていると、稲荷明神(後シテ)が出現して相槌を打ち、素晴らしい刀を打つことができたという話です。

中入り後に鍛冶壇として使われる一畳台が持ち込まれました。周りに注連(しめ)が張られ、真ん中に直方体の鉄床(かなどこ)が置かれています。

狂言の最中にぽつりぽつりと雨がほんのわずか落ちてきていましたが、能の中入りあたりから継続的に降り始めました。観客各々が配布された雨ガッパを装着。継続的ですがまだぽつぽつと落ちる程度の弱い雨足。最後まで本降りになるなよ!と祈ります。

後シテの稲荷明神が現れました!頭にかぶる輪冠の上にキツネさんが逆立ちしています!可愛いぃ~~(*´▽`*)♡

中正面寄りの脇正面席だったので目付柱の陰になり、鍛冶を打つシーンは残念ながらよく見えませんでした。能では珍しい写実的なシーンと言えますが、ここは普段能を観る時と同じく心の眼で観ることにします。あぁーー、見えなくとも鍛冶を打つ音が聞こえてくるようです!

稲荷明神のダイナミックな舞は元気いっぱいでとても良かった!シテは宝生流の若き宗家、宝生和英さんでした。

雨には降られましたが、弱い雨だったのでそんなにはストレスを感じずに済み幸いでした。

昨年は寒くて観ている間にどんどん冷えてきて徐々に辛くなってきたのですが、今回も夜にはぐっと冷え込み風も吹いていたにも関わらず、昨年の教訓を生かしコートの下にさらにダウンを着て完全防備で防寒してたまたま雨ガッパ着ることになったおかげもあり全く寒さを感じなくて良かったです。薪のすぐそばだったのでほのかに火の温かさが届いていたせいもあるかもしれません。

昨年は嵐の直後だったので強風が吹いていて桜も終わりかけで桜吹雪がものすごく、それはそれで素晴らしい雰囲気でしたが、次回はぜひとも満開の桜の下でお能を楽しんでみたいと思っていたので願いが通じて良かったです。

昨年の夜桜能→奉納 靖国神社 夜桜能

皆様も来年の夜桜能を楽しんでみてはいかがでしょう?雰囲気は良いですし、あらすじの載ったプログラムやイヤホンガイドもありますので、お能が初めての方でもきっと楽しめると思いますよ!

奉納 靖国神社 夜桜能(第二夜)
4月2日(水)18:40~
@靖国神社能楽堂
舞囃子「三井寺」
狂言「宗八」
能「小鍛冶」

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今年は桜満開であります!キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
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能舞台の上に花びらが散り風雅。
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能舞台を囲むように桜の木が植えられている。舞台上から見てもキレイなのであろうな。
薪に御神火が灯され一層幻想的な雰囲気に。

杉本文楽・曽根崎心中付り観音巡り@世田谷パブリックシアター

「杉本文楽・曽根崎心中付り観音巡り」@世田谷パブリックシアター、千秋楽を観てきました。

杉本博司さんという現代美術作家がプロデュースした作品で、東京では前売券が即日完売するほど人気の公演です。今回は当日券も出たようですが観られなくて悔しい思いをした人も多いと思います。

私は以前に杉本博司さんプロデュースの野村萬斎さん三番叟を観て、これはあまり好きではない!と思ってしまったので、その先入観もあり、少々構えて観てしまったかもしれません。

これ以降、この作品に対する思うところを書きますが、結論から言うと文楽自体は良かったですが、杉本演出はやはり好きになれませんでした。決して批判するつもりはなく、これは好き嫌いの問題なので、杉本ファンの方お怒りにならないでください。

正直申しまして、本公演で観た曽根崎心中ほどの感動には至りませんでした。昨年5月に本公演で観たばかりでその感動をまだ覚えていますので、もっと間が空いていれば少し感想は違っていたかもしれません。

演劇にはエンターテインメントとアートの要素があると思いますが、よりアート色が強い作品のように感じました。

杉本さんは文楽を材料にしてご自分のアート作品を作りたかったのだと思います。作品を完成させてご自分で眺めて良いものができたと満足したかったのだと思われます。文楽を観にきたお客さんをお芝居で楽しませることが目的ではなくて、杉本文楽という作品をわかる人だけがわかればいいと考えておられる。究極に言ってしまえば満足するのはご自身だけでも良かったのかもしれません。
アーティストとしてはそういう姿勢でも全くかまわないと思います。天才肌のアーティストはむしろ観る者に歩み寄らない孤高の存在である方が素晴らしいものが作れたり、価値が高く感じられるようなところもありますので、それはそれで一つの形として結構なのです。

映像収録用の公演(本来と違う公演)をわざわざ催すと聞いたので、なおさらそう感じてしまったのかもしれません。
先日ある能の会でテレビ収録のカメラが入り、演者さんが「観客の皆様にはご迷惑をおかけいたします」とおっしゃっいました。何気ない一言ですがテレビ収録というイベントも大切な中で、その場で観ている観客への心遣いが嬉しかったのです。今回はそれとは間逆の対応の気がしましたので。

人形遣いは主遣いも含めて全員が頭巾をかぶった黒子姿でした。舞台には手摺りがなく普段は見えない足もとまで全身丸見えです。
目立たないようにという意味があって黒子のはずなのに、なぜか出遣いの時よりも妙に目立って感じました。人形一体に三人の人形遣いですから、お初と徳兵衛の二人しかいなくても6人もの黒い人間がモコモコひしめいていてまるで羊の群れのように見えます。あぁ、いつもあんなに狭そうにやっていたのね、たいへんそう…。たいへんそうに見えるのは演出としてどうなのかな?

本来の文楽公演でも全員黒子姿の演目や場もあるというのに、今回殊さらそう感じたのは何故なのでしょう。全身が見えてしまっていることや、いつもは床のそばで見上げるように人形を見ていたのが、今回は上から見下ろす感じで観る劇場だったせいもあるのかもしれません。

個人的な感想では、主遣いは出遣いでも良かったんじゃないかな~と思います。人形の表情や指先の動きまでよく見えるような舞台間近の席で観られる人は例外ですが、ほとんどの人には全体は見えても人形の細かな動きや表情は遠くてよく見えていません。にも関わらずこれまで人形の動きや表情がよく見えているように感じていたのは何故か。

実は観ている方は、主遣いの顔の向きや目線、体の動きによって人形の動きや表情をとらえていたのではないだろうか。出遣いシステムは人形遣いのスター化がもたらしたと勝手に思い込んでいましたが、劇場が広い場合には出遣いの方が人形の動きをわかりやすく見せることができることに気付いて今の方式になったんじゃないかな、と思えてきました。

そういえば今回は観音巡りの勘十郎さんによる一人遣いが見どころの一つだったのですが、なぜかあまり人形の印象が残らなかったのです。床(大夫・三味線)の音楽の斬新さと背景のアニメーション動画のインパクトが強かったので、それに負けてしまった感がありました。出遣いであればバランスが良かったのでは…という気がしてます。

主遣いがいつもの高い舞台下駄を履いていなかったのも演出の都合なのでしょうが、いつもと違う高さで遣わなければならない左遣いや足遣いは辛いんじゃないかなぁ…と心配したり。そういえば三谷文楽でも舞台下駄を履いてませんでしたが、どういう演出効果を狙っていたのか知りたいところです。

三味線の譜面台が出ていたのが珍しかったです。本公演ではもちろん譜面は見ないで演奏しますし、その他の公演でも譜面を見ながら演奏したのは見たことがありません。清治さんが眼鏡をかけてめくっていたので実際に譜面を見ていたのだと思います。
観音巡り以外は本公演でもたびたび演奏していると思うのですが、今回かなり内容が違っていたのでしょうか。演出や曲が違っていたとしても清治さんご自身が作っていると思うんですけど。一回きりの舞台ならまだしも、欧州公演も含めるとかなりの回数を上演しているので暗譜してないわけがないと思うのですが。ちょっと不思議に思いました。

床は総じてとても良かったです。観音巡り、清治さん作曲の音楽は何か現代的な感じでテンポもリズムも良く、呂勢大夫さんはよく挑んでおられました。
天満屋の段、嶋大夫さんの語りは、杉本だろうが何だろうが関係ない、ワシはワシの浄瑠璃を語るんじゃ、的ないつもと全然変わりない感じが良かったです。

道行も良かった。5月公演ほどでなかったけど、やはり胸にこみあげるものがありました。ここは技芸員さん全員の本領発揮という感じがしましたので、杉本演出がもはやあまり気にならなくなっていました。

欲を言えば字幕があれば良かったんじゃないかな~と。解説つきの台本が500円で販売されていましたが、上演中は客席の照明は暗く落とされてしまい読めないですし、開演前に読む十分な時間もありません。アートに無粋な電光字幕はNGだというのはよくわかるんですけど。特に観音巡りは普段上演されていないものですから、ほとんどの人が初見ですし言葉も難しくわかりにくいので、字幕があった方が語りの面白さがもっと楽しめたような気がします。

私は(古典とコラボした)杉本作品がやはり好みではないと今回はっきりわかりましたが、技芸員さんたちの頑張りはよく伝わってきました。観てる間は太夫の語りや三味線の演奏、人形の動きをそれなりに楽しみながらも、やっぱり何だかな~ともやもやしていたりしたのですが、カーテンコールで汗びっしょりで観客の拍手に応えてくださった技芸員さんたちのお顔はみな晴れやかで、難しい要求に応えつつ全身全霊で演じて楽しませてくれたのだと感激しました。

野村萬斎さんの時は、杉本さんの個性に萬斎さんが飲み込まれてしまった感がありました(萬斎三番叟はやはり能楽堂で観るのが一番だと思いました)。しかし、今回の文楽は演出は変わってもこれまで古典で培ってきた自身の芸をそれぞれに貫いて撥ね返すだけのパワーがあったように感じました。伝統芸能と現代アートのコラボや、古典への現代演劇的アプローチには懐疑的な私なのですが、三業の技芸員たちの力量によってかえって伝統芸能の底力と揺るぎなさを感じることができたように思いました。観ないままでは何も評価できないし、こんなにいろいろ考えてしまうほどに自分はやはり文楽が好きなんだと再認識できたので、観に行って本当に良かったと思います。

これをきっかけに文楽を初めて知ったり、本来の文楽公演も観に行きたいと思われたお客さんがいらっしゃれば何よりだと思います。むしろ、これを見ただけで文楽はこういうものだと思い込んでほしくない、ぜひ本当の文楽に触れていただきたいです。

もし可能であれば観音巡りをいつの日か、東京か大阪の本公演でも上演できる機会が訪れればいいなと思います。

意欲的に取り組まれた技芸員の皆様方の努力には敬意を表し、本当にお疲れ様でしたと申し上げるばかりです。大阪公演でも数多くのお客様に楽しんでいただけますよう、皆様方のご活躍を願っております。

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お稽古日記-謡・仕舞ともに新しい曲

今月から謡も仕舞も区切りよく新しい曲、どちらも3曲目に入りました。謡は「土蜘蛛」、仕舞は「紅葉狩」。両方とも化け物系ですな~(笑)

謡は初の弱吟です。今まで習ってきた強吟とは同じ記号でも意味が違ってきます。音階もちょっとばかり複雑になります。聴いた感じは弱吟の方が強吟よりメロディアスに感じます。うまく謡えるととても気持ちが良さそう。でもまだ記号の違いに混乱しておりまして、気持ちよく謡える段階でもありません。

まずは師匠のお手本をひたすら反復することで暗記してしまいます。すっかり覚えてしまってから記号を復習することにします。暗記場所は主にお風呂と通勤途中です。謡本を見なくてもすらすら謡えるために細切れ時間をフル活用。もう周囲を気にしてなんていられません(笑) 今までも謡はだいたいこのやり方で練習してます。

仕舞は、師匠に今回はどんな曲がいい?と問われて「女性が舞う曲がやりたいです」と希望しました。兄姉弟子を見ていると武将が舞う曲がかっこいいな~と思い惹かれてしまうのですが、動きが速いと次から次へと型をこなすのが精一杯でやっつけ仕事になってしまいそうなので、ゆったりしている方が基本の型をきちっと身につける方に集中できると思ったからです。

紅葉狩のシテの本性は人間の女性でなく鬼なんです。でも男を誘惑して油断させるために(取って喰うために!)妖しくしっとり舞うべきなんだろうな~、という理想はありますが、そんな余裕をかますのは10年早いですね!

ともかく、9月の発表会でこの曲を舞わせて頂けるよう、お稽古頑張りたいと思いますヽ(´▽`)/

梅の花写真集@神遊 雪月花三番能

観世能楽堂で「神遊 雪月花三番能」を観て参りました。能三番・狂言一番、5時間半。観る方も大変ですが、今回は観世喜正さんがお一人で三番ともシテを勤め、囃子方や地謡方にもフル出演の方がいらして、演る方もきっと大変だったことでございましょう。
雪=「鉢木」、花=「杜若」、月=「融」と、「雪月花」にちなんだ三演目でございました。
演目に季節を当てはめてみると、鉢木は冬、杜若は夏、融は秋、…では、春は?? 観世能楽堂の玄関前の梅の木の花が咲いておりました。今日は17度まで気温が上がったこともあり、本格的な春到来!休憩時間に梅を愛でるお客さん多数。私も写真撮りまくってきました(^^)
休憩時間に「鉢木」のおワキの森常好さんとロビーでお目にかかることができました。ボケーッと歩いていたらお声をかけられて…既に私服に着替えられていたので、最初、誰!?と思ってしまいました(めっちゃ油断してました。笑) 舞台の謡もですけど普段お話しするお声も素敵ですわ~(*^^*)

文楽3月地方公演@サンパール荒川

文楽地方公演@サンパール荒川(荒川区)に行って参りました。

地方公演では初お目見えの会場。大きな会場ですが認知度が今ひとつだったのか都内にも関わらず大入りでなくてもったいない。A席2000円で10列目でしたから結構お得感はありました(S席は3000円)。

花競四季寿より万歳、鷺娘、ひらかな盛衰記より松右衛門内の段、逆櫓の段。面白い演目で楽しめました。

昼間に貸し切りで行われた学校公演のプログラムを無料でいただきまして(夜公演のプログラムは有料500円)、これを観るわけじゃないのになんで?と思いましたが、他の地方公演ではもらえない(ここだけプログラムが違うんだそうです)ものなのでまあレアものゲットということで(笑)

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本日、夜の部の演目は、花競四季寿、ひらかな盛衰記でございます~。

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サンパール荒川(荒川区民会館)大ホール。なかなか広い会場です。都電荒川線の駅からは近いけど、メトロの駅からはちょっと遠いかな~。

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昼間の学校公演のプログラム(無料)。実際に観た夜公演とは違う演目なので、なぜこれをくれたのが不思議です(余ったからくれたのかな?)

第95回粟谷能の会「道成寺」(後編)

これまでのお話
第95回粟谷能の会「道成寺」(前編)鐘を吊る
第95回粟谷能の会「道成寺」(中編)乱拍子

4日も経つとさすがに記憶があいまいになってきました…。細かいところ記憶違いがありましたらスミマセン。ご指摘歓迎。

乱拍子を舞っていた白拍子の様子が急に変わり、急ノ舞となります。

シテは激しく舞いながらも鐘の方を何度か見ます。鐘を気にしているような表情です(能面にも表情があるのよ!)。その視線の変化から、徐々に鐘に近づいていっているような印象を受けます。ついにシテはつけていた烏帽子を扇で払い落し、鐘の下に入り足拍子を踏み飛び上ります。それと同時に綱を握って釣鐘を固定していた鐘後見が、綱を緩めて鐘を落とします。

鐘が落ちたときにシテが宙に浮き上がり鐘にしゅっと吸い込まれたように見えました。鐘入り大成功!とてもキレイに決まりました\(o^▽^o)/ヨクデキマシタ!美しい鐘入りと引き換えにシテは頭をぶつけるという代償を払ったはず。本当にたいへんなお仕事ですね…。落ちた直後の鐘が少し浮き上がり回ったのが見えました。中のシテが鐘を回しているのです。これはシテが無事であることの合図だそうです。鐘入りは一歩間違うと大ケガしかねない大勝負なのです。あぁ、とにかく御無事に鐘入りできて良かった…と見ているこちらもまずは安堵( -o-)=з

鐘が落ちると、橋懸かりで控えていたアイがその音に驚いた演技をします。揺りなおせ揺りなおせ、くわばらくわばら、地震か、雷か、などとセリフを言いながら、二人ともごろごろ橋懸かりで転がります。脇正面の橋懸かりすぐそばで観ていた友人は、お能でごろごろ転がるシーンがあると思わなかったと言ってびっくりしていました。

鐘楼の方向から音が聞こえたと二人が見に行くと、吊り上げたはずの鐘が落ちています。鐘が落ちたーーー!?二人は驚き鐘に近づき触れてみると鐘が煮えたぎって熱くて触れません。で、住僧に報告に行かなければということになるのですが、女人禁制と言われていたのに入れてしまったポカをやっちゃってます。住僧に怒られたくない二人は、お前行け、いや、お前が行け、と押し付け合いをします。この辺がちょっとしつこいコントのようです(笑)

結局オモアイの萬斎さんが報告に行くはめになります。報告を受けた住僧は、道成寺の鐘にまつわる因縁を語り始めます。おワキは森常好さんです。いつ聴いても麗しい美声ですぅ~(*´▽`*) ここの語りは聴きどころです。常好さんの語りがあまりに素晴らしくて引き込まれてしまいます。鐘の中に隠れた山伏が鐘に巻きついた大蛇に焼かれて消滅~というところは本当に背筋が寒くなりました・・・彡(-ω-;)彡

そして、ワキとワキツレ(住僧達)が祈祷をして悪霊を払おうとします。祈りを捧げていると、鐘が揺れ、少しずつ上がって蛇体となった後シテが現れます。

鐘の中でシテはたった一人でお色直しをします。鐘の中がどうなっているかは我々には謎ですが、狭くて暗い鐘の中で装束を替えたり面をつけ替えたりするのは大変そうですねぇ。アイの演技やワキの語りの間、ひとり懸命に変身している場面を想像すると頑張れ!(o`・ω・)o、と応援したくなります。

後シテは般若の面をつけています。横の髪を長く垂らしていました。お下げ髪のようでちょっと可愛らしい(くす。笑)。しかし、住僧達に凄みをきかせる般若の面はめっちゃ怖いです~。恐ろしい形相の後シテは住僧らに戦いを挑みます。住僧達も法力で応戦します。

シテがシテ柱に背中をつけてまといつく柱巻き、勇ましく住僧達に立ち向かっていた蛇体ですが、ここで悶えているような苦しげな様子。なんか妙に色っぽいぞ!ヘビ子ちゃんもやっぱり女なのよね~。

激闘のすえ、住僧達が勝利します。ここでシテは橋懸かりを歩み、最後は揚幕の手前で足拍子を踏み、腰をおろしました(日高川に入水したことを表現と思われる)。化生の者は去りました。ワキがユウケン(広げた扇を胸の前で二回右上にはね上げる)をして勝利のポーズ(ここ、かっこいい!)。その間に、シテはすっくと立ち上がり、揚幕の奥に歩み入ります。

シテの退場は、橋懸かりを猛ダッシュして揚幕の奥に勢いよく飛び込むものとばかり思い込んでいたので、この終わり方は意外でした。静かな余韻がかえって不気味で怖い…。話はまだ続きますよ…みたいな。To be continued! (…なのか?)

このエンディング、勢いよく飛び込む演出だと、最後まで化け物パワー持続、もう完全に化け物になっちゃったんだねー、という感じがします。一方、静かに去る演出では、執心のあまり化け物に変化してしまったけど、元々は人間の女の子だったんだよねー、というニュアンスが残る気が。化け物退治して気分爽快、ではなく、ちょっぴり可哀そうな気持ちになりますなぁ…(´-ω-`)

こうして、冒頭少しハラハラする場面もありましたが、大成功で「道成寺」完です。出演者陣は超一流、緊迫と感動の素晴らしいお舞台でした。能では拍手をしないポリシーの私(※)も、思わず周囲の熱気に酔わされて拍手喝采!(o´ェ`ノノ゙☆

(※)この話はこちらに詳しく(お能の拍手について考えてみた)

道成寺は特別な曲です。他の演目より大がかりな作り物を扱い、準備や申し合わせも入念に行い、危険を伴うために安全に細心の注意を払い…。そのため総力結集の度合いは数ある演目の中で群を抜いていましょう。無事に終わった時の演者さん裏方さんの一体感や達成感もひとしおではないでしょうか。

私は道成寺を観る度に、この舞台を作ってきた人たちはこの日のために本当によく頑張ってきたのだ、そして、おシテを始めとした演者さん一人一人が全身全霊で芸に取り組んでいるのだ、と感じます。総力結集の成果を肌で感じ、その場に居合わせることができる幸運をとてもありがたく思うのです。今回もそんな幸せを頂くことができました。

いやぁーーー、いいもん見せていただきました。ありがとうございましたーーー!\(o^▽^o)/

第95回粟谷能の会「道成寺」テレビ放映決定!
「古典芸能への招待」NHK-Eテレ
平成26年4月27日(日)21:00~23:00
※能「道成寺」録画中継

「にっぽんの芸能」NHK-Eテレ
平成26年4月18日(金)22:00~22:58
※収録映像の一部を紹介

次回の粟谷能の会は10月12日ですわよ~ん♪
次回の粟谷能の会は10月12日ですわよ~ん♪

第95回粟谷能の会「道成寺」(中編)

鐘が吊り上げられ妖しくも美しい白拍子が登場したところで前回は終わりました。
前回まで⇒ 第95回粟谷能の会「道成寺」(前編)

これが後編と思いきや、書いているうちにどんどん長くなって、まだ中編です。もうしばらくおつきあいを~。

乱拍子とは、シテが小鼓と息を合わせて独特のリズムで足拍子を踏む舞です。動きが止まっている時間が長く、その分、小鼓のかけ声・打音とシテの足拍子の瞬間の迫力がすごいです。シテと小鼓の一騎打ちとも言える緊迫した場面です。

最初はまっすぐ正面を向いていた小鼓方の大倉源次郎さんが、床几ごと体の向きを少し斜めに変え、シテの方を見る格好となりました。
シテと相対する準備万端です。ここからは二人だけの世界に入っていくのです。源次郎さんの真剣な表情が凛々しすぎる!おシテの明生さんもお顔は見えませんが能面の裏側は真剣な面持ちであったことでしょう。今、この二人は精神的に強く結び付きあったのだ…!この情景を傍から見ながら、二人の青春は私の青春、このままずっと見ていたい、などと妄想(笑)

喜多流では、道成寺は幸流の小鼓方が勤められるのが通例だそうで、おシテの粟谷明生さんも披き(初演)では幸流の小鼓方と共演されたとのことです。二度目の今回は大倉流の小鼓方との共演を望まれました。実際に演じてみてどのような違いがあったのでしょう?私は残念ながら初演を拝見していないので違いを知る由もありませんが、明生さんご本人は大いに感じるものがおありになったことと思います。

シテが小鼓のかけ声と打音に合わせて、つま先やかかとを上げたり下げたりひねったりして少しずつ足を動かし、そのとき動きが完全に止まっている間がしばし続き(乱拍子がラジオ放送で無音事故になったことがあるというのは本当なのだろうか)、そして足拍子、という動作が基本なのですが、この舞と言えるのかどうかもわからない奇妙な動きにどういった意味があるのか未だよくわかりません・・σ( ・´_`・ )。oO

意味・・・?能の動きに意味を求めるのはナンセンスなのかもしれません。能は観る者がそれぞれ想像力を働かせて感じる芸能です。しかしあえて意味を考えてみました。

乱拍子の解釈は多々あると思うのですが、鐘楼への階段を昇る白拍子の歩みを表しているという一説がありました。なるほど~、一理あります。だから足づかい中心の動きなんだと説明がつきます。

私は白拍子が鐘に近づくために足技を使って妖力をかけているんじゃないかという気がしてきました。白拍子が舞っている最中に人々は眠ってしまいます。これ、催眠術をかけられたんじゃないですかね?足づかい中心なのでどうしても一点を注目することになりますよね。一点を見つめていると暗示にかかりやすくなるのでは。5円玉揺らす代わりに足を少しずつ動かして見せる。科学的根拠は全くないですが、そんな妄想を巡らせてしまいました(笑)

静寂の中で、小鼓のかけ声と音、足拍子の音、そして時折の笛の音のみが響き渡り、見所には異様な空気がはりつめています。少しの物音もたててはいけないそんな雰囲気です。舞台上には妖力が満ち満ちている。それを観客が傍観しています。妖しく美しい女性がこれから何をしでかそうとしているのか固唾を飲んで見守っているのです。感覚は研ぎ澄まされ、一つ一つの動きや音も逃すまいと舞台に目と耳が釘付けになります。そして舞台上から流れてくる妖力の影響を受けた一部のお客さんは夢の世界に(笑)

ワタクシこれまで数知れぬほど道成寺を観てきてますけど、乱拍子でこれは素晴らしいと唸らされたものは本当に数少ないです。正直申しますと、途中でちょっと飽きてくることが多かったです。だからよく時計を見てしまうのですが、今回は舞台から目が離せず時間を見るのもすっかり忘れていました。実際には長くもなく短くもなく…だったのでしょうか。感覚的には5分か10分で終わってしまったように思えるほどあっという間でした(あぁ~もっと観ていたかった…、けど、やる方はしんどいっすよね。笑)。

明生さんと源次郎さんのこの上ない素晴らしい共演、ひとつひとつの動作や発音が丁寧に扱われていて、息もぴったり合い真剣な中にも楽しそうにノッている様子ですらある。記憶には映像と音声がしっかり刻み込まれて、思い起こすといまだに鮮明に蘇りますが、なぜなのか言葉にしたくてもこれ以上うまく言葉にできないのです~。あぁぁ、語彙不足で本当に申し訳ない。そんなわけで、実際の映像は4月27日のNHKの放送をご覧ください(笑)

乱拍子の終盤にシテ謡があり、大鼓の演奏が再び入り、とたんにお囃子がにぎやかモードに。シテも激しく舞いだします。急ノ舞です。この急展開で妖力によって眠らされていたお客さんたちも覚醒します(笑)

さあ物語はいよいよクライマックスへ。つづきは明日です!

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第95回粟谷能の会「道成寺」(前編)

このところ毎回拝見してはまっております喜多流・粟谷能の会。今回は道成寺ということもあり、SS席を奮発いたしましたよ~。正面席、前から2列目ど真ん中。最上級のお席です。この幸せに感謝であります(*´▽`*)

<ざっくりあらすじ>
道成寺で鐘を再建することになり、寺の能力が新しい鐘を吊り上げる。女人禁制の鐘楼に、能力は白拍子を入れてしまう。白拍子は舞いながら鐘に近づき、鐘の中に入ってしまう。と、同時に鐘が落ちてしまった。能力は住僧に鐘が落ちたことを報告すると、住僧は鐘にまつわる話をし、祈祷で鐘の呪いを払おうとする。すると鐘が上がり、中から蛇が現れる。蛇と僧たちが闘った末、僧たちが勝利し、蛇は日高川に逃れていく。

下掛り流儀なので、アイが芝居がかりで鐘を運んで設置します(上掛り流儀(観世・宝生)の場合は、最初に後見が運んできて設置する)。鐘の重さは80キロほどあるそうですので、実際にはアイ2人、後見2人が鐘の竜頭に通した太い竹の棒を担ぎ、後見2人が横から鐘を支えて、6人がかりで運んできます。アイの野村萬斎さん、深田博治さんが「えいやーえいとーなんと重い鐘ではないか~」などと途中挫折しそうになりながら運ぶお芝居をします。鐘はかなり高さがあるので(人ひとりが入るんだからそりゃそう)担ぐ4人は両手を高く掲げて棒を持ち上げ、つま先立ちで歩いてきます。重いものを担いでつま先立ちで歩くのはさぞやキツいことでしょうなぁ。

鐘は鮮やかな緑色でした。ワタクシ喜多流の道成寺をこのところしばらく観てなかったようです。道成寺の鐘っていうと紺色か紫色のイメージがありました。でも、緑色がホンモノの鐘の色に一番近いかも~、いいかも~。

舞台中央まで行きますと、アイが鐘を吊るします。能舞台の天井に滑車が設置されていて、そこに鐘の竜頭に付けられた綱を通します。天井に届くくらいの長い竹の棒が二本用意されます。綱の先端は輪になっていて、まずは先が二つに分かれた竹の棒の先に綱の先端部分を挟み、天井の滑車に綱の先端(輪の部分)を差し込みひっかけます。そして、先に鉤がついているもう1本の竹の棒で綱の輪をひっぱると、挟んである方の竹の棒がはずれ、滑車に綱が通ります。いつも思うのですが、能の作り物や道具は本当によくできているなぁと感心します。動きに無駄がでないように合理的にできています。

しかし、今回、珍しく鐘を吊るのにかなり手間取りました。竹の先端に綱を挟む時もすんなり挟まらず。深田さん少し緊張?うまくいかないことが多い、綱の輪っかを滑車にひっかけるのは一発で成功したのですが、そのあと、滑車がぐるぐる回ってしまって思い通りの向きに定まらず、綱がどうしても真っ直ぐかかりません。しまいに電話の受話器のコードのようにこんがらかってしまいました。綱が真っ直ぐになっていないと、鐘を落とす時にたいへん危険です。何度も直そうとするのですが、なかなかうまくいきません。いったん萬斎さんが鐘を吊るときのセリフを言い始めましたが、萬斎さん、思い直したようにセリフを止めまた綱をほどいてやり直し始めました。見てる方もなんだかハラハラです(゚д゚;) リトライの結果、今度はきれいに綱がかかりました。こちらも思わず「ヨシ!これで大丈夫!」と心の中でガッツポーズ。改めて鐘が吊りあげられ、演技再開です。

さあさ、鐘が吊り下がりました。能力(アイ)は住僧(ワキ)に「女人を入れてはいけないよ~」と命じられています。

そこへ、白拍子(前シテ)が妖しげな雰囲気を醸しながら登場します。

本日のおシテは喜多流・粟谷明生さん(58歳)です。道成寺は2回目とのこと。披きのフレッシュさとまた違った円熟味を見せていただけることを大いに期待ですっ!!\(o^▽^o)/

鐘の供養をしたいと申し出た白拍子に、能力は舞って見せるなら~とあっさり許可してしまいます(あらあら~)。

そして、白拍子が烏帽子をつけて舞い始めます。「乱拍子」という独特の舞です。

長くなりましたので、つづきはまた明日に。

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赤坂文楽「妹背山婦女庭訓」

「赤坂文楽」を観て参りました。いつもの赤坂区民センターが工事中ということで、今回は高輪区民センターでの開催。会場が狭いということもあり今回はチケット争奪戦でした。案の定、満席でございます。運よく入場できまして本当に感謝です。

第一部、桐竹勘十郎さんと吉田玉女さんがご登場。まずは勘十郎さんから玉女さんの二代目吉田玉男襲名についての祝辞があり、ようやく「女」が「男」になれますねとのジョークに会場もリラックスムードに。玉女さんご自身、故・初代吉田玉男師匠から、「女」が「男」になれるよう研鑽するようにと言われていたとのことで、47年間の時を経て念願叶いまことにおめでたいことです。

「妹背山婦女庭訓」名場面の映像を観ながら、二人のトークが進む形式。ほとんど勘十郎さんがお話しになり、玉女さんはそれに返答するような感じです。

まずは三段目「山の段」の映像が流されます。中央に吉野川が流れ、上手(右側)と下手(左側)に屋敷があります。上手が背山(男の屋敷)、下手が妹山(女の屋敷)という構成です。また、通常は上手側にある太夫と三味線の床も、上手、下手の両方に設置されているという珍しい演出。舞台全体がシンメトリーとなっています。

吉野川は本当に川が流れているように見える仕掛けが組まれ、手動と電動の場合があるそうで、電動は流れが速くて騒音も発するとか、お二人は手動の方がお好みとのことでした。

床は掛け合いで、映像では背山の豊竹呂大夫さんと鶴澤清治さん、妹山の豊竹嶋大夫さんと野澤錦弥さん(現・野澤錦糸さん)が確認できました。20年くらい前なのでしょうか。みなさん、とてもお若くて、私の大好きな嶋大夫さんもこの頃全盛期と言っていいかも、嶋さんの雛鳥はのびやかで色艶のあるお声が素敵でしたわ~~(〃▽〃)

人形は、久我之助を吉田玉男さん、雛鳥を吉田簑助さんが遣っておられました。玉男さんは玉女さんの、蓑助さんは勘十郎さんのお師匠様で、人間国宝であらせられます。お二人がお互いの師匠の芸について様々に語られました。

勘十郎さんは、蓑助師匠の姫を遣う際の品や色気について、自分はまだ出せていないとおっしゃいます。また、玉女さんも、二枚目の役を得意としていた玉男師匠のように、動かさずに存在感を出すのが難しいとおっしゃいます。

お二人とも師匠の芸を観て盗もうとするが、なかなかその域に到達できていない、たいへん難しいとおっしゃるのです。還暦をすぎて、観客の私たちから見れば今や何の文句のつけどころもない大御所であるお二人がなんと謙虚なことなのでしょう!改めて文楽の芸が一生学び続けなければならない険しい道なのだと思い知らされます。

この段は、敵対する家同士の恋人が死して一緒になれたという話なんですが、母親が娘の首に死化粧を施して雛流しの道具に乗せて川を渡します。哀切極まりないこの場面、映像を観ている一同しーーーん…。勘十郎さんが「初めてこの舞台を観た時はたいへん素晴らしくて感動し、今でも大好きな場面です。雛鳥が本当に可哀そうでねぇ・・・(と言葉を詰まらす)」という様子にこちらもグッときました(T^T)

次に四段目「井戸替の段」と「杉酒屋の段」の映像が流されます。
杉酒屋の段は人間国宝・竹本越路大夫さんが語られていました。残念ながら今回は床の映像は流れず音声のみでしたが、私はお舞台を拝聴することはなかったので、これが伝説の!!と感動(*´▽`*)

そして、玉女さんのお若いころ(30歳前後?)の映像が!!なまらかっこええ~~~。今もかっこいいですけど、昔からしゅっとなさってたんですね。玉女さんって髪の色は黒→白に変わりましたが、髪の量は全然変わってないですよねー。

勘十郎さんのお若い映像も見たかったですけど、この時は黒子だった?と思われ。ご尊顔拝することができず残念でございまする…。

玉男師匠と先代勘十郎師匠は「勘ちゃん」「玉男くん」と呼び合う仲だったそうで、玉女さんが玉男さんになったらそういうふうに呼び合う仲になれるかな、と勘十郎さん。同い年で仲が好さそうなお二人です。

さて、お二人の楽しい解説つき、映像の鑑賞もあっという間に終わり、休憩をはさんでの第二部は「道行恋苧環の段」の実演でございます。

舞台の後方、真中に床が設置されました。観客席と太夫・三味線が対面となる配置です。

この段は昨年の東京公演でも上演されましたが、二枚目の求馬を取り合うお三輪と橘姫がとても可愛らしいです。二人は同じ年頃の若い女性ですが、片やお姫様、片や町娘ですので、全く違うキャラクターです。町娘のお三輪の方が積極的な感じです。このような場面でも橘姫はおっとりして品があります。お三輪の方が横恋慕で分が悪いというのもありますけどね。それでも橘姫はライバル出現に心穏やかではないでしょうし。演じ分けが難しそうですね。勘十郎さんも10代半ばの女性を遣うのはとても難しいとおっしゃっていました(もう完璧にしか見えないのにまたまたご謙遜を…)。

ここは床も掛け合いで太夫も役がつき、それぞれのキャラクターを演じます。一人で語るときは登場人物の演じ分けとナレーションを全て一人でやるのでそれはそれで醍醐味なのですが、掛け合いのときは思いっきりその役になりきれるんじゃないでしょうかね。みなさん、伸び伸びと素敵に語ってらっしゃいました。道行は床も人数が多くて人形の動きも美しく、華やかでとても楽しいですね。何度観ても良いものです。

楽しい時間はあっという間に過ぎますね。満足至極!このあと、一緒だった友人と会場で会った友人と合流して御飯を食べに行き、文楽の話でまた盛り上がりました。あーぁーー、2月の文楽も終わっちゃった。ショボ――(´-ω-`)――ン。次は3月の地方公演を楽しみにいたしましょう!

赤坂文楽
人形浄瑠璃 文楽 伝統を受け継ぐ 其の四
~吉田玉男、吉田蓑助から受け継いだもの~
平成26年2月25日(火)18時半開演
@高輪区民センター区民ホール

<出演>
○第一部(トーク)
~文楽における伝統とは、文楽のおもしろさ、妹背山婦女庭訓の見どころ~
桐竹勘十郎
吉田玉女

○第二部
「妹背山婦女庭訓」より「道行恋苧環の段」
桐竹勘十郎
吉田玉女
吉田勘彌
竹本津駒大夫
豊竹呂勢大夫
豊竹芳穂大夫
鶴澤燕三
竹澤宗助
鶴澤燕二郎
ほかのみなさん

今回の会場は高輪区民センターです。白金高輪駅から直結の便利な場所にあります。
今回の会場は高輪区民センターです。白金高輪駅から直結の便利な場所にあります。
ホール玄関に貼られていた公演チラシ。
ホール玄関に貼られていた公演チラシ。
開演前。映像を映すスクリーンとトーク用の椅子が準備されています。
開演前。映像を映すスクリーンとトーク用の椅子が準備されています。
「道行恋苧環の段」の舞台。舞台後方に観客席と対面する形で床が設定されました。
「道行恋苧環の段」の舞台。舞台後方に観客席と対面する形で床が設定されました。
このような帯をして行ったら、友達から「苧環だから?」と言われ、はっ!なんたる偶然(笑)
このような帯をして行ったら、友達から「苧環だから?」と言われ、はっ!なんたる偶然(笑)