前夜に引き続き夜桜能です。
前夜⇒夜桜能 第二夜 「小鍛冶」
天気予報では雨のち曇りだったのですが…朝から降り続く雨がいっこうに止む気配がなく、それどころかだんだん本格的な雨になってきました。
で、案の定、会場変更に。靖国神社→新宿文化センター大ホール。
新宿文化センターはちょいとばかり不便な場所にあります。テンション下がります…。
3日間のうち本日だけ行かれた方は本当に残念でしたが、私は前日に靖国神社で観られているのでまだ救われます。能舞台じゃないっていうのは残念ですが、千人以上を収容できる能楽堂は存在しないのでいたしかたありません。
雨が本降りとなり新宿三丁目の駅に降り立つと、夜桜能のチラシを手に持ち行くべき方向を迷ってらっしゃる風のおばあさんが。案の定同じ目的地でしたので、おしゃべりしながら会場までご一緒しました。
義理でチケットをお求めになり横浜からおひとりでいらしたとのこと。お能は見たことはあるけどそう多くもないとおっしゃっていたので、今日の演目のことや出演者のことなどいろいろお話しました。せっかく遠くからいらしたのに夜桜じゃなくて残念。でも、楽しんで帰られていたらいいなぁ。
私にとって今日の目当ては夜桜というよりも「二人静」という演目でした。
静御前がとり憑いた菜摘女(ツレ)と、静御前自身の亡霊(シテ)が、鏡映しのように全く同じ装束を着て全く同じ舞を舞います。
能の場合、相舞は難しいものであるようです。
能面をかけていて視界が狭いため、相手の動きはほどんど把握することができません。音や気配でかすかに感じることぐらいではないでしょうか。
舞の型は決まっているので同じ舞を舞うことはできましょうが、ぴたりと合わせるのは非常に難しいと思われます。
動作が寸分の狂いもなく合ったとしたらそれこそ神技です。見えていないのですから。動きをぴったり合わせる必要はないのかもしれません。息は合っていなければいけないとは思いますが。
一卵性双生児のシテ方がいたとしたら、何もしなくても自然とぴたっと合わせることができそうな気がして、そういうチャンスが巡ってこないかなぁと思ったりもしますが。
まあ、今回も実際ぴったり合ってなかったということなんですが(笑)全く合ってなかったわけでもなく、シテの方がツレより若干ゆったりめに舞っていたのがちょうど良い感じでした。
伝承としてはぴたりと合わせて舞うということなんだろうな、と観ていて感じますが、少しずらす演出も面白そうだなと思ったりして。地謡とお囃子もあるので、そう単純にはいかないでしょうが、ほんの少し、0.5秒ぐらいずれていたら、静御前本人の重みが出るような気がします。
二人の静は全く同じ装束を付けていて扇の絵柄まで一緒なので、油断するとどっちがどっちなのかわからなくなりそう(笑)今回は身長差があったので、混乱しなかったですが。あと、年齢差がありましたので、やはりベテランはベテランらしく、若者は若者らしく舞われていたと思います。
ストーリー性はあまりない曲なのですが、とにかく舞が中心なので、やっぱり桜の下で見られた方が幽玄な雰囲気は楽しめたかもしれません。でも簡易能舞台でもお能はお能。出演者も豪華でとても楽しめました。
ちょっと能の相舞に興味が出てきました。
吉野天人という曲で天人揃という小書のときは天女がたくさん出てきて一緒に舞うので壮観です。私が観たのは7人でした。しかし数が多い方がごまかしがきくといったら聞こえが悪いですが観る方の視線が分散するので、やはり二人というのが一番難しいのだと思います。しばらく「二人静」にはまってしまいそうです。
狂言「蚊相撲」は、蚊の精が出てきて「ぷぅーーーーん」というセリフ(?)があったり、動きも面もユーモラスでとても楽しいお話です。最後に大名である野村萬さんが蚊になってしまい「ぷぅーーーーーん」と言いながら去るのがとても可愛かったです(*´▽`*)
帰宅時にはさらに雨が激しくなっていて、これで桜の花も見納めかな。来年の夜桜能を楽しみにしたいと思います!
奉納 靖国神社 夜桜能(第三夜)
4月3日(木)19:10~
@新宿文化センター大ホール(雨天会場)
舞囃子「安宅」
狂言「蚊相撲」
能「二人静」