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狂言風オペラ「フィガロの結婚」

本日はこれ!狂言風オペラ「フィガロの結婚」@観世能楽堂(千秋楽)

狂言風オペラは、私も大好きだった大蔵流狂言方の故・茂山千之丞さんが始められた新ジャンル。「フィガロの結婚」は2006年に初演、その時には役者は全て狂言師でしたが、2009年の「魔笛」でシテ方が加わり、今回初めて文楽の人形・太夫・三味線が加わったのだそうです。

文楽人形のエロおやじぶりが面白かったとネットで誰かが書いていましたが、勘十郞サマは品がおありになるので、全く下品でないのにちゃんと面白かったので安心しました(笑)

素朴な疑問として、床の太夫と三味線がいつもの位置と左右逆なのは何故だったんでしょう〜?
あと、勘十郞サマが舞台下駄をお履きになっていなかったので(能舞台だから下駄はNGなの?)、左遣いと足遣いがたぶん体勢的にしんどいですよねー(^_^;

シテ方は面をかけていましたが、目付柱が取り払われていたので、ちゃんと舞台の端が見えているのかドキドキでした。あと、登場してからしばらくの間は言葉を発しなかったので、もしやずっと無言なのか!?シテ方のセリフも太夫がアテレコしちゃったらどうしよう〜、と(なぜか)不安になりましたが、ちゃんとシテのセリフ(謡)があり意味もわかったので安心しました(笑)

主役はほぼ狂言方ですが、想像通り狂言とオペラ(特に喜劇)は相性が良い!装束と多少のセリフ以外はあまり狂言の様式にこだわっていない模様で、狂言の枠組みを超えた(これは能も文楽もですが)思い切った演出も結構ありました。

たまたま正面席と中正面席の通路側の席だったので、通路で行われた狂言方のお芝居も至近距離で見られて良かった!

音楽はスイスから来日したクラングアートアンサンブルにより、管楽八重奏とコントラバスにて演奏されました。アリアの部分も彼らが演奏し、とても美しい音楽でした。彼らの衣装は普通に洋服でしたが、全員、足袋をはいていてキュートでした。

実はこの公演、私としたことが全くのノーチェックでした。今日、Facebookの勘十郞さんページや友之助さんの書き込みを読んで、え?そんなのがあるの!と、フラフラ〜と観に行ったんですよね。

東京では昨日と本日の昼・夜で合計4公演、あさって22日には京都、23日には大阪で1公演ずつ行われるとのことです。今日は空席がかなり目立っていてもったいなかったなー(昼はどうだったか知らんけど)。平日の夜とはいえ祝日の前日なのに・・・。昨日の夜はもっと早い18時開演だったので、もっと厳しかったのでは?(余計なお世話か??)

いろいろな意味で、まだ試行錯誤の段階なのかなーという印象を受けましたが、とても面白い企画だと思うので、千之丞さんのご遺志をぜひ後世につないで頂きたいです!

梅の花写真集@神遊 雪月花三番能

観世能楽堂で「神遊 雪月花三番能」を観て参りました。能三番・狂言一番、5時間半。観る方も大変ですが、今回は観世喜正さんがお一人で三番ともシテを勤め、囃子方や地謡方にもフル出演の方がいらして、演る方もきっと大変だったことでございましょう。
雪=「鉢木」、花=「杜若」、月=「融」と、「雪月花」にちなんだ三演目でございました。
演目に季節を当てはめてみると、鉢木は冬、杜若は夏、融は秋、…では、春は?? 観世能楽堂の玄関前の梅の木の花が咲いておりました。今日は17度まで気温が上がったこともあり、本格的な春到来!休憩時間に梅を愛でるお客さん多数。私も写真撮りまくってきました(^^)
休憩時間に「鉢木」のおワキの森常好さんとロビーでお目にかかることができました。ボケーッと歩いていたらお声をかけられて…既に私服に着替えられていたので、最初、誰!?と思ってしまいました(めっちゃ油断してました。笑) 舞台の謡もですけど普段お話しするお声も素敵ですわ~(*^^*)

観世能楽堂「花影会」

観世能楽堂で「花影会」を観て参りました。

<演目>
能「采女」
狂言「成上り」
能「正尊」
他、仕舞三番

「正尊」【ざっくりあらすじ】
頼朝の命を受けて義経を討ちに行った土佐坊正尊だが、陰謀がばれそうになり義経&弁慶の前で起請文を書いて読みあげ、そんなつもりないよ~んと弁解する。その夜、シメシメばれなかったゾと思いこんでた正尊は夜討ちを決行するが、しっかりばれていて義経側に迎え討たれ縛り上げられ連れて行かれちゃった。
ーーー
起請文(きしょうもん)とは、人との約束を破らないことを神仏に誓う文書のことです。正尊は身の潔白を示すために「討ちに来たわけじゃないことを神々に誓う。もし破ったら地獄に落ちてもやむなし」という契約書を書いたわけです。

「正尊」は1時間ほどの短い能ですが、見どころがたくさんある作品です。そのうちの1つが起請文の読み上げです。「正尊」の起請文を読む部分は、「安宅」の勧進帳、「木曽」の願書と並んで、三読物と呼ばれていて、いずれも重習(=長い修練を積んだ後に習得と上演が許されるもの)です。

シテが起請文を読み上げるシーンですが、実際には何も書いていない白紙を手に持って読みます。勧進帳ならば何も書いていないものを読むという設定だからそのまんまだけど、起請文の場合は何かデタラメでもいいから書いてあった方がいいんじゃないの?と思いましたが、能はイメージで鑑賞する芸能ですから、観客の方も、そうね、何か書いてあるのよね、と想像しながら観るお約束です。

シテは直面(能面をかけていない)で、私は脇正面最前列で起請文を読むシテの真ん前だったため、表情がよく見えました。すると、ちゃんと目線が文字を読んでいるがごとく動いているんですよね!そうするように師匠から習うのかもしれませんが、面をかけている時はきっと顔は動かしても目線までは動かしませんよね。直面ならではの細やかな演技にちょっとした感動!ガラスの仮面で北島マヤがパントマイムでティーカップの持ち手を持つとき、手がテーブルから浮いている!と驚愕されたシーンを思い出しました。マヤ、なんておそろしい子!(わかる人しかわかりませんね。笑)

さて、話はワープしますが、最後に正尊がたくさん家来を連れて討ち入りしてきます。正尊と家来9人がぞろぞろと橋懸かりに登場します。橋懸かりに入りきるのがちょっと窮屈なくらいぎゅうぎゅう詰め(+_+) 全員、直面です。今日はイケメンのツレが多くて眼福でした(笑)本舞台上には、義経、弁慶、静御前、義経の家来2人、その他に、地謡8人、囃子4人、後見2人いますんで、一時は舞台上が29人にもなります。登場人物、多すぎでどこ見たらいいかもうわかりません(笑)

全員集合したところで正尊勢vs義経勢の斬り組がはじまります。斬り組というのはわかりやすく言えばチャンバラのことです。能にゆったりしたイメージをお持ちの方にはチャンバラ?って思われるかもしれませんが、あるんですよー。しかも、正尊の斬り組はかなり派手でアクロバティックな型の連続に、初めて見る人はたぶんビックリです!

正尊の郎等が次々と斬られていきます。正尊勢の方が人数多いのに、義経側のたった2人しかいない家来に簡単に斬られていきます。まあ、水戸黄門の助さんと格さんのようなもんですね(笑)
時代劇なら斬られた後は、その場に倒れて動かなくなるか、斬られたぁ~という体でフレームアウトするかだと思いますが、能の場合は「今斬られて死んだよ」というお約束の型をします。それが、飛び安座だったり、前方宙返りだったり、仏倒れ(直立したまま後ろに倒れる)だったり、とにかく驚くほどの派手な型!下手すれば怪我をしかねない危険ワザの数々です。

正尊の郎等のうち最後に斬られた姉和光景は、前方宙返り+仏倒れと二つを連続でこなしました。仏倒れは床直前まで後頭部が下がっていたのに着地するときはちゃんと背中から着いていました。ま、背中からでもかなり痛そうですが・・(>_<) 能楽師さんの運動神経は想像以上に優れているようです。

正尊の家来が全員倒された後、正尊と弁慶の一騎打ちになるんですが、最初二人とも長刀を振り回して激しい斬り合い、しまいに二人とも長刀を捨て、相撲のごとく取っ組み合いを始めます。今日のワキ弁慶は人間国宝・宝生閑さま、年初に体調を崩されていましたが、今日は速い動きも多く、長刀を振り回したり、最後には取っ組み合いまでなさって、もう完全復活と思ってよろしいですね!?閑さま贔屓のワタクシといたしましては、感無量でございます~(T_T)

最後に弁慶が正尊を押しつけて勝ち、二人の家来が正尊に縄をかけて連行するんですが、その連れて行かれ方がまた仰天。正尊は斜めに仰向け気味に身体を預けるような体勢で二人の家来に抱えられ、三人並んでものすごい勢いで橋懸かりから幕に走り込みます。まるで連れ去られた宇宙人のようでした(笑)

最初の能が「采女」という典型的な夢幻能(霊的存在が主人公)であり、いかにも能らしい世界観が表現されていました。終始ゆったりした流れで2時間以上かかる曲ですので、お能に慣れていない方にはちょっと忍耐がいるかも(^_^;) 今日は若手中心の出演者で構成され舞や謡も瑞々しくとても良い舞台だったと思います。

対照的に「正尊」は現在能(現実世界の出来事を描写)で、シテやツレも能面はかけず(生きてる人間だから)、時間も短く登場人物が多くて動きが派手で、初心者にもお勧めの演目です。私もこの手の能は好きでよく観に行っており「安宅」(勧進帳)なども大好きです。次の「花影会」(11月)は「安宅」を上演するそうです。ご興味がある方はいかがでしょう?歌舞伎の勧進帳と見比べてみるのも面白いと思いますよ!

kaeikai

張良

本日は観世能楽堂でお能を観てきました。観世流シテ方の松木千俊さんの独立二十五周年記念の会ということで、ほぼ満席、晴れ着の女性も多くとても華々しい雰囲気でした。

勝ち戦の武将が豪快に舞う「田村」も、涙なしには観られない「隅田川」も、我らが萬斎さまの「伊文字」も、すべて良かったですが、私の今回の一番のお目当ては何と言っても「張良(ちょうりょう)」なんです!
「張良」はお能の中では珍しい、ワキが大活躍する演目です。ワキ方の重い習い物(演じるのに特別の許可が必要な演目)とされています。否が応でも期待が高まりますね!

ざっくりしたあらすじ:
黄石公(=シテ)が、ほぅらこれを取ってこい、取ってこられたら兵法の奥義を伝授するぞ、と沓(くつ)を脱ぎ川に投げ落とすと、張良(=ワキ)が川に入り激流にもまれて沓を取ろうと悪戦苦闘するが、そこに突如現れた龍神(=ツレ)が沓を奪い取ってしまった。しかし、張良は剣を抜き果敢に戦いを挑んで龍神から沓を奪い返し、めでたく兵法の奥義を伝授される。
※黄石公=秦代中国の兵法の祖、張良=後に劉邦に仕えた秦代~漢代の軍師

この激流にもまれて沓を取ろうとする場面のワキの動きが、通常の能では見られないダイナミックな型の連続です。身体を大きく反って回転したり、つま先立ちで横歩きしたり(普段は摺り足なのに!)、テンポ良くスピーディに展開します。とてもエキサイティングなこの場面は、この曲一番の見どころとなります。

黄石公が沓を川に落とす場面は、実際には黄石公が沓を脱ぐのではなく、後見が後ろから沓を舞台前方に投げます。ここがちょっとした緊張の場面。舞台から落ちないように投げなくてはなりません。で、今日はもう少しで舞台から落ちるんじゃないかというギリギリの端っこに着地しました!

前回、張良を観た時も舞台の端っこに着地して、投げた後見が「アッ!!」という表情をしたのが見えたのですが、今回はおシテさんの蔭になって投げた瞬間の後見さんの表情は見えず。しかし、後見座に下がった後の平然とした表情を拝見するに、ふふん、オレのコントロールどんなもんだい!という自信にすらあふれて見えました(笑)実際、舞台の真ん中などに落ちてしまったら、張良が動きにくくてしょうがないでしょうから、ぎり端っこに落とすのがベストなんでしょうね!

今回、張良を演じられた村瀬提さんは福王流のワキ方です。しゅっとしたイケメン能楽師さんでしたね(笑)福王流というのは人数がとても少なく、東京には数人しかいないと聞いたことがあります。流派による違いというのは(張良をそんなに観たことがないこともあり)よくわかりませんでしたが、流派の芸を今後につないでいって欲しいですね~。

今日は後ろのオバチャンたちがずーっとおしゃべりしたり何やらゴソゴソしていてなかなか集中できなかったのですが(私もまだまだ鍛錬が足りませぬ・・)、張良を観たらスカッとしてイヤなこと全部忘れてしまいましたよ(*´▽`*)

※写真はイメージです!沓はこんなのでなく中国風のでしたよ。大中に売ってそうな(笑)

choryo

ハシゴ:謡音読会→花の会

本日は、国立能楽堂(謡音読会)→観世能楽堂(花の会)へ、ハシゴ。
昨日、国立劇場で文楽を観たので、気が高ぶってなかなか眠れず、4時間しか寝ていないうえに寝坊して、道に迷って走ったりして、これは絶対に演能中に寝ちゃうモードですw

で、狂言「月見座頭」の時は、大好きな山本家だったというのに、爆笑劇ではなかったこともあり、ちょっと眠かった・・(本当は名曲なのでもったいない・・)。

しかし、能「屋島」は、面白かった!全く寝るどころじゃないです。

源平、屋島の戦いをベースにした源義経が主人公のお話です。

小書(特殊演出)に奈須與一語が付き、間狂言で有名な「那須与一」(扇の的)の一節を仕方を交えて語るのは、我らが野村萬斎さま。これがまた何とも良い芸なんですね~。語りに引き込まれてしまい、全く目が離せませんでした。中正面の方を向いたときは、何回も目が合っちゃいましたし(←妄想 笑)

シテは観世流宗家、観世清和氏。なんかすごーく良かったです。これまで宗家の芸についてはあんまり印象が無かったのですが(20年以上前のイケメンぶりやマスコミからの扱われ方などばかりが印象に・・失礼ながら)、アレ?宗家、こんなに上手かったっけ??結構やるじゃん!と思いました。(←ナゼに、上から目線? 笑)

まあ、そんなこんなでお能デイを楽しんだ1日でした。

それにしても、なぜ何十回も行っている観世能楽堂に行くのに道に迷ってしまったのだろう。今日の松濤はトワイライトゾーンでした。小春日和の真っ昼間だったけど。