「赤坂文楽」を観て参りました。いつもの赤坂区民センターが工事中ということで、今回は高輪区民センターでの開催。会場が狭いということもあり今回はチケット争奪戦でした。案の定、満席でございます。運よく入場できまして本当に感謝です。
第一部、桐竹勘十郎さんと吉田玉女さんがご登場。まずは勘十郎さんから玉女さんの二代目吉田玉男襲名についての祝辞があり、ようやく「女」が「男」になれますねとのジョークに会場もリラックスムードに。玉女さんご自身、故・初代吉田玉男師匠から、「女」が「男」になれるよう研鑽するようにと言われていたとのことで、47年間の時を経て念願叶いまことにおめでたいことです。
「妹背山婦女庭訓」名場面の映像を観ながら、二人のトークが進む形式。ほとんど勘十郎さんがお話しになり、玉女さんはそれに返答するような感じです。
まずは三段目「山の段」の映像が流されます。中央に吉野川が流れ、上手(右側)と下手(左側)に屋敷があります。上手が背山(男の屋敷)、下手が妹山(女の屋敷)という構成です。また、通常は上手側にある太夫と三味線の床も、上手、下手の両方に設置されているという珍しい演出。舞台全体がシンメトリーとなっています。
吉野川は本当に川が流れているように見える仕掛けが組まれ、手動と電動の場合があるそうで、電動は流れが速くて騒音も発するとか、お二人は手動の方がお好みとのことでした。
床は掛け合いで、映像では背山の豊竹呂大夫さんと鶴澤清治さん、妹山の豊竹嶋大夫さんと野澤錦弥さん(現・野澤錦糸さん)が確認できました。20年くらい前なのでしょうか。みなさん、とてもお若くて、私の大好きな嶋大夫さんもこの頃全盛期と言っていいかも、嶋さんの雛鳥はのびやかで色艶のあるお声が素敵でしたわ~~(〃▽〃)
人形は、久我之助を吉田玉男さん、雛鳥を吉田簑助さんが遣っておられました。玉男さんは玉女さんの、蓑助さんは勘十郎さんのお師匠様で、人間国宝であらせられます。お二人がお互いの師匠の芸について様々に語られました。
勘十郎さんは、蓑助師匠の姫を遣う際の品や色気について、自分はまだ出せていないとおっしゃいます。また、玉女さんも、二枚目の役を得意としていた玉男師匠のように、動かさずに存在感を出すのが難しいとおっしゃいます。
お二人とも師匠の芸を観て盗もうとするが、なかなかその域に到達できていない、たいへん難しいとおっしゃるのです。還暦をすぎて、観客の私たちから見れば今や何の文句のつけどころもない大御所であるお二人がなんと謙虚なことなのでしょう!改めて文楽の芸が一生学び続けなければならない険しい道なのだと思い知らされます。
この段は、敵対する家同士の恋人が死して一緒になれたという話なんですが、母親が娘の首に死化粧を施して雛流しの道具に乗せて川を渡します。哀切極まりないこの場面、映像を観ている一同しーーーん…。勘十郎さんが「初めてこの舞台を観た時はたいへん素晴らしくて感動し、今でも大好きな場面です。雛鳥が本当に可哀そうでねぇ・・・(と言葉を詰まらす)」という様子にこちらもグッときました(T^T)
次に四段目「井戸替の段」と「杉酒屋の段」の映像が流されます。
杉酒屋の段は人間国宝・竹本越路大夫さんが語られていました。残念ながら今回は床の映像は流れず音声のみでしたが、私はお舞台を拝聴することはなかったので、これが伝説の!!と感動(*´▽`*)
そして、玉女さんのお若いころ(30歳前後?)の映像が!!なまらかっこええ~~~。今もかっこいいですけど、昔からしゅっとなさってたんですね。玉女さんって髪の色は黒→白に変わりましたが、髪の量は全然変わってないですよねー。
勘十郎さんのお若い映像も見たかったですけど、この時は黒子だった?と思われ。ご尊顔拝することができず残念でございまする…。
玉男師匠と先代勘十郎師匠は「勘ちゃん」「玉男くん」と呼び合う仲だったそうで、玉女さんが玉男さんになったらそういうふうに呼び合う仲になれるかな、と勘十郎さん。同い年で仲が好さそうなお二人です。
さて、お二人の楽しい解説つき、映像の鑑賞もあっという間に終わり、休憩をはさんでの第二部は「道行恋苧環の段」の実演でございます。
舞台の後方、真中に床が設置されました。観客席と太夫・三味線が対面となる配置です。
この段は昨年の東京公演でも上演されましたが、二枚目の求馬を取り合うお三輪と橘姫がとても可愛らしいです。二人は同じ年頃の若い女性ですが、片やお姫様、片や町娘ですので、全く違うキャラクターです。町娘のお三輪の方が積極的な感じです。このような場面でも橘姫はおっとりして品があります。お三輪の方が横恋慕で分が悪いというのもありますけどね。それでも橘姫はライバル出現に心穏やかではないでしょうし。演じ分けが難しそうですね。勘十郎さんも10代半ばの女性を遣うのはとても難しいとおっしゃっていました(もう完璧にしか見えないのにまたまたご謙遜を…)。
ここは床も掛け合いで太夫も役がつき、それぞれのキャラクターを演じます。一人で語るときは登場人物の演じ分けとナレーションを全て一人でやるのでそれはそれで醍醐味なのですが、掛け合いのときは思いっきりその役になりきれるんじゃないでしょうかね。みなさん、伸び伸びと素敵に語ってらっしゃいました。道行は床も人数が多くて人形の動きも美しく、華やかでとても楽しいですね。何度観ても良いものです。
楽しい時間はあっという間に過ぎますね。満足至極!このあと、一緒だった友人と会場で会った友人と合流して御飯を食べに行き、文楽の話でまた盛り上がりました。あーぁーー、2月の文楽も終わっちゃった。ショボ――(´-ω-`)――ン。次は3月の地方公演を楽しみにいたしましょう!
赤坂文楽
人形浄瑠璃 文楽 伝統を受け継ぐ 其の四
~吉田玉男、吉田蓑助から受け継いだもの~
平成26年2月25日(火)18時半開演
@高輪区民センター区民ホール
<出演>
○第一部(トーク)
~文楽における伝統とは、文楽のおもしろさ、妹背山婦女庭訓の見どころ~
桐竹勘十郎
吉田玉女
○第二部
「妹背山婦女庭訓」より「道行恋苧環の段」
桐竹勘十郎
吉田玉女
吉田勘彌
竹本津駒大夫
豊竹呂勢大夫
豊竹芳穂大夫
鶴澤燕三
竹澤宗助
鶴澤燕二郎
ほかのみなさん