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称名寺薪能

昼間、鎌倉観光をたっぷり楽しんで、一路横浜へ。目的地は金沢文庫駅から歩いて一五分のところにある称名寺です。GW期間中はライトアップしているとのことで、ライトアップした橋や建物をバックに薪能が見られるということで、期待が高まります。

地元のための催しということで、区役所窓口でチケット販売されており、良い席は窓口で買うのが一番なのでしょう。ネットで買ったせいか、かなりの後方席。しかも、私の一つ後ろの列からは一段高くなっているのに、最前列から私の列までは全く段差が無く。もう一つ後ろだったら良かったのに・・・(´・ω・`)

なんだか雨が降りそうなビミョーな天気になってきました。寒っ!薪能では絶対に忘れちゃならない防寒対策を全くしてこなかった(ーー;) ダウンを着ている人もちらほら。まずいな、こりゃ。

最初に横浜副市長の挨拶があり、次にこの地域の子供達や一般の素人さん達の謡が披露されます。子供達も全員着物でかわいい♡ 謡っている最中に遠くから唄声が聞こえてきます。何か別の催し?薪能をやる日に別のイベントを重ねるなんて気が利かないなと思いました。せっかく謡っている声が全く聞こえません。

素人さんの謡が終わると火入れ式です。この薪能にずっと参加しているという地元の方が火入れ奉行を勤めます。火が本堂から運ばれてくるのですが、先ほどの唄声がだんだんこちらに近づいてきます。あれ?別の催しではなかったの?そして松明の火と一緒に法被姿のいなせな男達が唄いながら会場に入ってきたのです。どうやら地元のきやり保存会の人達で木遣り唄のようです。儀式の一環としてこの行列行進を入れたのでしょう。しかし、素謡の最中にいれたのはいかがなものでしょう。謡っている最中に別の音が入るなんて普通の謡曲会や発表会ではありえませんぜ。せっかく習った成果を披露しているのにはっきり言って邪魔。せめて発表が終わってから、火入れの行列を始めれば良かったのではないかな?

火入れ式が終わり、仕舞、狂言「蚊相撲」能「放下僧」と続きます。天候の関係で休憩はなしになりました。、確かに雨降りそう。あるいは謡の発表と木遣り唄がかぶったのも、時間を短縮するためだったのかもしれません。運営側の苦労がしのばれます。しかし、寒い中であるからこそトイレ休憩はしっかり確保して頂きたかったと思います。トイレが会場内に無く、いったん会場の外に出ないとならないので、休憩を設けると戻ってくるのに時間がかかり、予定が押してしまう懸念があったのかもしれません。

雨が降ってきたら、もっと悲惨なことになるのはわかっていますが、観客には不親切な対応だったと感じ残念に思いました。

肝腎のお能ですが、前の人の頭でほとんど舞台が丸ごと見えませんでした。段差の無い列のお客さんは皆、右か左に頭を傾けて必死に見ようとしています。椅子もすこしずつずらすように配置して、前の列の頭と頭の間から見られるようにすればいいのに・・・と思いました。私はもう観ようとするのを諦めて、聴くことに専念、一度見たことがある演目なので、今あれやっている、これやっているとひたすら想像です。

幸運にも結局雨は降らず。美しいライトアップを堪能して参りました。次に見に行く機会があったらぜったいに正面席の前の方を取ろう!

夜桜能 第三夜 「二人静」

前夜に引き続き夜桜能です。
前夜⇒夜桜能 第二夜 「小鍛冶」

天気予報では雨のち曇りだったのですが…朝から降り続く雨がいっこうに止む気配がなく、それどころかだんだん本格的な雨になってきました。

で、案の定、会場変更に。靖国神社→新宿文化センター大ホール。

新宿文化センターはちょいとばかり不便な場所にあります。テンション下がります…。

3日間のうち本日だけ行かれた方は本当に残念でしたが、私は前日に靖国神社で観られているのでまだ救われます。能舞台じゃないっていうのは残念ですが、千人以上を収容できる能楽堂は存在しないのでいたしかたありません。

雨が本降りとなり新宿三丁目の駅に降り立つと、夜桜能のチラシを手に持ち行くべき方向を迷ってらっしゃる風のおばあさんが。案の定同じ目的地でしたので、おしゃべりしながら会場までご一緒しました。
義理でチケットをお求めになり横浜からおひとりでいらしたとのこと。お能は見たことはあるけどそう多くもないとおっしゃっていたので、今日の演目のことや出演者のことなどいろいろお話しました。せっかく遠くからいらしたのに夜桜じゃなくて残念。でも、楽しんで帰られていたらいいなぁ。

私にとって今日の目当ては夜桜というよりも「二人静」という演目でした。

静御前がとり憑いた菜摘女(ツレ)と、静御前自身の亡霊(シテ)が、鏡映しのように全く同じ装束を着て全く同じ舞を舞います。

能の場合、相舞は難しいものであるようです。

能面をかけていて視界が狭いため、相手の動きはほどんど把握することができません。音や気配でかすかに感じることぐらいではないでしょうか。

舞の型は決まっているので同じ舞を舞うことはできましょうが、ぴたりと合わせるのは非常に難しいと思われます。

動作が寸分の狂いもなく合ったとしたらそれこそ神技です。見えていないのですから。動きをぴったり合わせる必要はないのかもしれません。息は合っていなければいけないとは思いますが。

一卵性双生児のシテ方がいたとしたら、何もしなくても自然とぴたっと合わせることができそうな気がして、そういうチャンスが巡ってこないかなぁと思ったりもしますが。

まあ、今回も実際ぴったり合ってなかったということなんですが(笑)全く合ってなかったわけでもなく、シテの方がツレより若干ゆったりめに舞っていたのがちょうど良い感じでした。

伝承としてはぴたりと合わせて舞うということなんだろうな、と観ていて感じますが、少しずらす演出も面白そうだなと思ったりして。地謡とお囃子もあるので、そう単純にはいかないでしょうが、ほんの少し、0.5秒ぐらいずれていたら、静御前本人の重みが出るような気がします。

二人の静は全く同じ装束を付けていて扇の絵柄まで一緒なので、油断するとどっちがどっちなのかわからなくなりそう(笑)今回は身長差があったので、混乱しなかったですが。あと、年齢差がありましたので、やはりベテランはベテランらしく、若者は若者らしく舞われていたと思います。

ストーリー性はあまりない曲なのですが、とにかく舞が中心なので、やっぱり桜の下で見られた方が幽玄な雰囲気は楽しめたかもしれません。でも簡易能舞台でもお能はお能。出演者も豪華でとても楽しめました。

ちょっと能の相舞に興味が出てきました。
吉野天人という曲で天人揃という小書のときは天女がたくさん出てきて一緒に舞うので壮観です。私が観たのは7人でした。しかし数が多い方がごまかしがきくといったら聞こえが悪いですが観る方の視線が分散するので、やはり二人というのが一番難しいのだと思います。しばらく「二人静」にはまってしまいそうです。

狂言「蚊相撲」は、蚊の精が出てきて「ぷぅーーーーん」というセリフ(?)があったり、動きも面もユーモラスでとても楽しいお話です。最後に大名である野村萬さんが蚊になってしまい「ぷぅーーーーーん」と言いながら去るのがとても可愛かったです(*´▽`*)

帰宅時にはさらに雨が激しくなっていて、これで桜の花も見納めかな。来年の夜桜能を楽しみにしたいと思います!

奉納 靖国神社 夜桜能(第三夜)
4月3日(木)19:10~
@新宿文化センター大ホール(雨天会場)
舞囃子「安宅」
狂言「蚊相撲」
能「二人静」

舞台上には桜の花が飾られ夜桜能の雰囲気を演出
舞台上には桜の花が飾られ夜桜能の雰囲気を演出
新宿文化センター大ホール。2階席まであり約1800人収容できます。
新宿文化センター大ホール。2階席まであり約1800人収容できます。

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夜桜能 第二夜 「小鍛冶」

奉納 靖国神社 夜桜能(第二夜)に行って参りました。

第一夜は晴れて暖かく桜は満開で最高の薪能日和であったそうです。第二夜は夜が深まるにつれ雨が広範囲で降り出すという予報。

16時半に当日の会場が発表されます。雨天の場合は代替会場になりますが、とりあえず靖国神社での開催が決まり、胸をなで下ろします。あとは終演まで降らずに持ってくれることを祈るばかり。

昨年は桜の開花が異様に早く、夜桜能の時期にはほとんど散ってしまい葉桜能となってしまったのですが(笑)今年は満開真っ盛りの時期に当たりまさにどんぴしゃのタイミングです。

まず靖国神社に着いて驚いたのは、花見客の多さ!レジャーシートを敷いて宴会している人々や屋台もたくさん出ていて昨年とは全然違う雰囲気に面食らいました。屋台から食べ物の美味しそうな匂いが漂ってきまして、そっちにふらふら行ってしまいそうになります(笑)

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昨年の夜桜能。花見客などおらず閑散としている。

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それが今年はこのように!
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連なる屋台と花見をする人々。

さて開場時間となり境内に入ります。一般の参詣客が18時からは境内に入れなくなり残念そうに表門の写真を撮っていました。

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開場前。行列する観客達。
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一般参詣客は18時以降入れず立ち尽くす。中には当日券を買って入る人も。

まずは無料の雨ガッパが配布されました。有料ですがひざかけレンタルやイヤホンガイドもあります。昨年も感じましたが、この公演はサービスやスタッフの対応がとてもきめ細かく、観客への気配りが行き届いていてとても気持ちが良いです。

屋外能の場合、寒いのに簡易トイレだったりして、お手洗いに行くのを躊躇しがちなんですが、ここの場合は参集殿のきれいなトイレが使えるのでとても快適です。

千円でプログラムを購入。桜色の表紙のしっかりしたプログラムです。能の詞章も載っています。

プログラムも桜色~♪
プログラムも桜色~♪

境内に入りますと、すぐに能舞台がありますが、わぁーーーー!予想通り桜が満開だぁ!!(*´▽`*)♪

能舞台は120年の歴史があり黒々としていて荘厳な雰囲気が漂います。舞台上に散る桜の花びらがまた風流であります。

脇正面席4列目です。二千人ぐらい?は収容できると思われる野外能。後ろの方では雰囲気は楽しめてもお能自体はあまり見えないと思い今回もSS席を奮発しました。

最初に火入れ式があります。4人の火入れ奉行が裃姿で松明を携え厳かに登場、本舞台の左右に設置された薪に御神火を灯します。薪のすぐそばの席で観ていましたが、なかなかつかず最後にボッと音をたてて超特大の炎が上がったので私は思わずぅわぉっ!と声を出してしまい…周りの方ゴメンナサイ_(_^_)_

屋外で声が後方まで届きにくいのでスピーカーが設置されています。演者はワイヤレスマイクを仕込んでいるようです。昨年はスピーカーから聞こえる声が違和感でしたが、慣れたのか今年は特に気にならず。

舞囃子「三井寺」。桜の花びらが舞う中で裃姿のシテが舞うのを見るのは風雅なものです。もうすっかり江戸城の将軍様気分です。

狂言「宗八」。野村万作さん、萬斎さん親子がご出演。元僧侶だった料理人と、元料理人だった僧侶がそれぞれ主人に魚を料理することと経を読むことを命じられますが、お互い新米のため思うようにできず、それぞれが教え合うことを提案しますが、しまいに役割を交代してしまい、主人に怒られるというお話。

主人が帰ってきた時に慌てて魚を持ったままお経を読んだり、経典の巻物で魚を切ろうとしたりするシーンはドタバタしていてとても楽しい♪ 万作・萬斎親子とても可愛かったです(*´▽`*)

能 「小鍛冶」。三条小鍛治宗近(ワキ)が一条天皇より御剣を打つよう勅命を受けますが、相槌を打てる者がいないのでお引き受けできないと断ります。相槌とは刀工の助手ですが、刀工と同等の力量を持つ者でないと勤めることができないのです。不思議な童子(前シテ)が現れ、中国や日本の名刀奇譚を物語り自分が相鎚を勤めようと約束して消えます。宗近は刀を打つことを決心し仕事の準備をしていると、稲荷明神(後シテ)が出現して相槌を打ち、素晴らしい刀を打つことができたという話です。

中入り後に鍛冶壇として使われる一畳台が持ち込まれました。周りに注連(しめ)が張られ、真ん中に直方体の鉄床(かなどこ)が置かれています。

狂言の最中にぽつりぽつりと雨がほんのわずか落ちてきていましたが、能の中入りあたりから継続的に降り始めました。観客各々が配布された雨ガッパを装着。継続的ですがまだぽつぽつと落ちる程度の弱い雨足。最後まで本降りになるなよ!と祈ります。

後シテの稲荷明神が現れました!頭にかぶる輪冠の上にキツネさんが逆立ちしています!可愛いぃ~~(*´▽`*)♡

中正面寄りの脇正面席だったので目付柱の陰になり、鍛冶を打つシーンは残念ながらよく見えませんでした。能では珍しい写実的なシーンと言えますが、ここは普段能を観る時と同じく心の眼で観ることにします。あぁーー、見えなくとも鍛冶を打つ音が聞こえてくるようです!

稲荷明神のダイナミックな舞は元気いっぱいでとても良かった!シテは宝生流の若き宗家、宝生和英さんでした。

雨には降られましたが、弱い雨だったのでそんなにはストレスを感じずに済み幸いでした。

昨年は寒くて観ている間にどんどん冷えてきて徐々に辛くなってきたのですが、今回も夜にはぐっと冷え込み風も吹いていたにも関わらず、昨年の教訓を生かしコートの下にさらにダウンを着て完全防備で防寒してたまたま雨ガッパ着ることになったおかげもあり全く寒さを感じなくて良かったです。薪のすぐそばだったのでほのかに火の温かさが届いていたせいもあるかもしれません。

昨年は嵐の直後だったので強風が吹いていて桜も終わりかけで桜吹雪がものすごく、それはそれで素晴らしい雰囲気でしたが、次回はぜひとも満開の桜の下でお能を楽しんでみたいと思っていたので願いが通じて良かったです。

昨年の夜桜能→奉納 靖国神社 夜桜能

皆様も来年の夜桜能を楽しんでみてはいかがでしょう?雰囲気は良いですし、あらすじの載ったプログラムやイヤホンガイドもありますので、お能が初めての方でもきっと楽しめると思いますよ!

奉納 靖国神社 夜桜能(第二夜)
4月2日(水)18:40~
@靖国神社能楽堂
舞囃子「三井寺」
狂言「宗八」
能「小鍛冶」

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今年は桜満開であります!キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
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能舞台の上に花びらが散り風雅。
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能舞台を囲むように桜の木が植えられている。舞台上から見てもキレイなのであろうな。
薪に御神火が灯され一層幻想的な雰囲気に。

飛鳥山薪能「土蜘蛛」「附子」

【久々にお能の感想。蟹の写真が混ざっている理由とは!?】

昨夜は飛鳥山薪能に行って参りました。先週末は新宿御苑で薪能。薪能づいております。カミングアウトするとワタクシ薪能はあんまり好きじゃないです(笑) でもまあ今回は前から二列目の真ん中という最高の席だったし演目が良かったので結構楽しめましたよ~。

狂言の「附子(ぶす)」は演目解説で横浜能楽堂館長も仰っていましたが、かつては小学校の国語の教科書に載っていました。それが私と狂言の最初の出会いだったように思います。最近では「附子」を知らない若い人も多いですね。
今回は野村万作さん&萬斎さん親子が太郎冠者と次郎冠者で、これはもう安定の面白さです。客席が心地よい笑いに包まれつかみはOKです!

能「土蜘蛛」ざっくりあらすじ。
原因不明の病に伏せる源頼光の元に怪僧が現れる。その正体は土蜘蛛で、頼光は蜘蛛の糸を投げかけられ襲われるが応戦し、化生の者は逃げ去る。頼光が斬りつけた土蜘蛛の血の跡を追って、独武者と家来たちが土蜘蛛のすみかをつきとめ退治する。

この能の見どころは何と言っても、シテの土蜘蛛が白い糸を次から次へと投げ放つところでしょう。
昔は太くて短い糸を象徴的に投げていたのが、明治時代に金剛流で細い糸をたくさん投げる演出が考え出され、それが他流にも広がったのだそうな。

今回は「さゝ蟹(ささがに)」という小書(特殊演出)がついていました。これは狂言方の小書で、本来であれば間狂言は家来の役ですが、この小書がつくと蟹の精霊2名が登場し、彼らが手をチョキにして横歩きして出てきて、退治されるのが自分たちのことだと勘違いして恐れたり、蜘蛛の糸など自分たちのはさみでちょん切ってやればよい、などとユーモラスな会話が繰り広げられます。この小書はとても新しくて昭和になってから出来たものであるようです。

「土蜘蛛」自体が新しい曲で、作られたのは江戸時代だそうです。そう言われてみると、構成や演出は従来の伝統的な演目の型とはなにか違った新作な感じがいたしますな。

最初に登場するシテツレ「胡蝶」などは最初に出てきてすぐひっこんでしまう意味不明の謎の存在。
シテの「土蜘蛛」は前振りもなくいきなり登場し、観ている人にも何が何やらわからないミステリー感で期待が高まります(後場で世を乱すために近づいたと述べます)。
前シテ(怪僧=土蜘蛛)がひっこんでからようやくワキ(独武者)が登場とかイレギュラーな構成。まあとにかく人の出入りが多くて飽きが来ないです。

後場で、古塚を意味する作り物の引き回し(覆い布)が下ろされると、ジャジャーン!蜘蛛の巣デザインが登場。なにやらモダンな感じです。これを豪快に蹴破って土蜘蛛の化け物登場!赤基調のキンキラキンの装束に赤頭カッコエー!!
そして土蜘蛛と独武者一行が闘争する場面での舞働(まいばたらき)(=お囃子を伴う表意的な所作)も豪快に決まってました。

蜘蛛の糸、投げられるわ投げられる、何度投げられたことであろりましょう、大サービスです!いったいどこにあんなに糸がしまってあったのでしょう?投げる回数は特に決まっていないそうですよ。今回はたくさん投げた方じゃないでしょうかね。舞台上が白い雲海のごとく埋め尽くされたほど。ちなみに蜘蛛の糸は細い和紙を紙テープ状にした小道具が使われ千筋の糸と呼ばれています。

白い糸が投げられ放物線を描き宙に浮く様子に、客席から「おぉーーー」とか「わぁ、きれいーーー」という声が上がり(ほとんど花火を見るような反応ですネ)両手から放たれた糸がキレイに放射状に広がって決まったときには拍手喝采、能楽堂ではあまり見られない屋外の会場ならではの光景でしたね~。

土蜘蛛は上演時間も短いし、最初から最後までテンポ良く物語が展開し、観客を飽きさせないので、薪能にはピッタリな演目だと思います。船弁慶なんかも薪能向きですね。パイプ椅子にじっと座って寒さと戦っている時に静かな曲はちょっと辛いです(^_^;)

今回の演者紹介を眺めていたら昭和40年代生まれが3分の2を占めていました。同世代の活躍嬉しく思います。ほぼ40代ですが能楽の世界においては時代を担う若手世代なんですよね~。これは私も老け込んではいられない!(笑)
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奉納 靖国神社 夜桜能

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先週4月2日(火)~4日(木)に開催され、私は第二夜を観てきました。
初日は雨天のため会場が日比谷公会堂に変更されましたが、第二夜と第三夜は、無事、靖国神社の能舞台で上演されました。

その頃巷では歌舞伎座新開場で盛り上がっていましたが、私の頭の中は夜桜能でいっぱい。初日と二日目は天気が気になって気象情報サイトを数分おきに見ては気を揉み、三日目は前夜の余韻にひたっていて、3日間全く仕事に身が入りませんでしたね~(←おバカ)

観能当日。その日は前夜からの嵐がやまず、昼過ぎまで激しい風雨に見舞われ、能舞台での上演が危ぶまれましたが、4時少し前に靖国神社で開催決定との報を受け、いそいそと帰り支度を始める私(早すぎるっつーの。笑)

<第二夜演目>
舞囃子「安宅」
狂言「文荷」
能「船弁慶」

桜の花は嵐ですっかり散ってしまったのだろうな~と半ば諦めていましたが、桜たちまだまだ頑張っていましたよ。ライトアップもされて幻想的な雰囲気。雨はすっかり上がっていましたが、風がまだかなり強かったので、時折、突風が吹き桜吹雪が濃紺の夜空に舞い、それがまた何とも綺麗でした。

最初に火入れ式がありました。靖国神社の神殿より御神火が運ばれ、松明に移されて、本舞台の左右に篝火が灯されます。
粛々と・・と言いたいところですが、マイクアナウンスがちょっと不粋だったかな。式の進行が逐一説明され、火入れ奉行を務めるお偉いさんの名前が紹介され・・おそらく後ろの人が見えにくくて何をやっているかわからないから必要なのかもしれませんが、テレビの中継でも見ているようで厳かな気分はちょっぴりそがれます。

さて、火入れ式が終わると、いよいよ舞台が始まります。
篝火は二箇所のみでしたが、本舞台と橋懸かりに電気の照明が点灯されました。それが明るすぎて、もはや薪能の雰囲気ではなくなります(笑)

最初の舞囃子では、紋付き袴に肩衣を付けたシテ、地謡、お囃子が登場。裃姿のシテが花吹雪の中で舞う様は、あたかも江戸城での儀式を見ているようでした(時代劇のイメージ。笑)能舞台の上にも桜の花びらが落ちていて、風流でしたなぁ~。

狂言には、万作さまがご登場。お年を召されていますし、年初に体調も崩されていたので、この寒さなのに大丈夫かしらん、と心配しましたが、お元気にお茶目に演じられていました。面白かったぁ。たくさん笑いました。

休憩を挟んで、いよいよ「船弁慶」です!誰が見ても何度見ても絶対に面白いキングオブザ能演目。でも毎回新しい発見があります。今日はどんな船弁慶になるのだろう?期待が高まります。
おシテは宝生和英さん。宝生流の若き宗家です。嵐に負けず若々しく元気いっぱいに演じたという印象です。

静御前(前シテ)が舞っている最中に、橋懸かりからひっそりと萬斎さまご入場。橋懸かりのすぐ側に座っていた私はついついチラ見(コラ、ちゃんとシテの舞を見なさい!笑)。あれ?何かちょっと怖い顔している?寒い!って怒っているのでは?たしかに他の演者さんに比べて狂言の装束は少々薄着な感じです。

後場がすごーく良かったです!凪いでいた海が突然荒れ始め、平知盛の亡霊(後シテ)が登場、という筋書きなのですが、本物の嵐との相乗効果満点!いまだ舞台の上に吹き抜ける強い風が演者の装束を翻しはためかせ、あぁぁ、本当に嵐の中で船に乗っているように見えますぅぅ!!
ゴォォォォォーーーという上空の風の音が、荒れ狂う海上での義経弁慶vs平家亡霊の壮絶な戦いを効果的に盛り上げます。強風が知盛の黒く長い髪の毛(黒頭)を逆立てます。強風のおかげでより恐ろしい形相の知盛、一丁上がりです!演者さんらの迫真の演技もありましたが、自然の力も手伝ってたいへんドラマチックな舞台となりました。

会場ではひざかけのレンタル、使い捨てカイロや温かい飲み物の販売、お手洗いへの速やかな誘導など、防寒に対するサービスが充実、また、無料の雨具配布、イヤホンガイドのレンタル、プログラムの客席販売など、至れり尽くせりのサービスで、会場スタッフの方々の応対もとても親切で気持ちが良かったです。

天候が荒れて寒かった第二夜とは打って変わって、第三夜は春らしく暖かく穏やかな天候の中で舞台が行われたそうです。やはり年初に病床にあった宝生閑さまもご出演なさったそうで、もうすっかりお元気になられたようですね。こうして夜桜能は無事3日間の幕を閉じました。来年こそは満開の桜の下で観られたらいいな!

夜桜能@靖国神社 写真集

水曜日に奉納靖國神社夜桜能(第二夜)を観てきました。昼間、暴風雨だったので、予定通り行われるか心配しましたが、午後3時頃には雨も上がり、神社内の能舞台で無事上演されました。すっかり葉桜になると思っていましたが、桜の木もまだ頑張ってましたよ。お能の感想はまた後日書きます。とりあえず写真だけアップいたします。