鷹姫

本年の観能納めは、イエーツ原作、新作能「鷹姫」でございました(ホントに今年はこれで最後です、お名残惜しゅう~)。

この演目を観るのはおそらく十数年ぶりで、観る前は非常にワクワクしておりましたが、観終わっての感想は、もちろんとても良かったのですが、やはり初めて観た時ほどのインパクトはなかったです。ちと期待が大きすぎたのカモ・・(^_^;)

しかしながら、後から反芻して一つ一つ思い出してみるとやはりすごい作品だと思いました。

初めて観たのがいつだったか誰が出演していたか忘れてしまいました。観る前は「新作能?フフン、そんなの面白いのかね?」と生意気にも上から目線だったのですが(なんて恐れ多い・・)、観た後は、これは能と言うより完成された新しい演劇だと非常に深い感銘を受けたのを覚えています。

「鷹姫」は新作能といっても初演が1967年で、これまで何度となく上演されているので、もはや定番作品と言えるでしょう。

今回の配役は、「鷹姫」友枝昭世、「空賦麟」山本東次郎、「老人」梅若玄祥、「岩」その他大ぜい(略してゴメン 笑)
友枝さんは喜多流、東次郎さんは大蔵流(狂言)、梅若さんは観世流でして、流派を超えた共演です。

そういや、友枝さんと東次郎さんは、先日観た小原御幸でもご一緒でした。お二人とも人間国宝です。ゴージャス共演アゲイン!

ちなみに、東次郎さんは、私が日本一愛らしいと思っている能楽師さんです♡

75歳の東次郎さんが若者 空賦麟(クーフーリン)を熱演、これがすごく良かったです。それにしても個性強すぎw どうみても東次郎以外の何者でもないクーフーリン(笑)

友枝さんは、本当に鳥のように華麗に舞っていました。鷹というより鶴か白鳥のような美しさです。先日の小原御幸とは対照的に動き速い速い!本当に72歳ですか!?(笑)

梅若さんは老人の役。呪縛に囚われ、あげくに霊になっちゃった老人を好演。梅若六郎玄祥の名で演出も手がけています。新作能に意欲的なお方。

「鷹姫」では、「岩」という合唱隊がいわゆる地謡にあたると思うのですが、本来の能のように大人しく座ってなくて歩いたり動いたりします。 全員、半仮面をつけていて、もう誰が誰だかわかりません(笑) 印を結ぶなど、通常の能では見られない面白い所作もありまして、この「岩」の演技が「鷹姫」を特徴付けているとも言えます。

開演前後に能舞台や客席の照明を落としたり、上演中も客席の照明はいつもより暗めとなっていて、その辺りは現代劇のような感じです。開演18時でしたが、実際に始まったのは18時10分過ぎで、その10分間を待つ薄暗い観客席は異様な静寂に包まれていました。

従来の能の形式に囚われない新しい試みを取り入れて作られ、数々の才能ある能楽師や関係者が携わり、改作を重ねて40年以上に渡り上演されてきたこの作品が、完成度の高い傑作であることは間違いありません。

「鷹姫」作者の横道萬里雄氏が今年、お亡くなりになったということで、今回は追悼公演と言ってもよいかもしれません。豪華キャストのこの舞台を拝見し、年末最後の良い締めくくりとなりました。

来年もたくさんお能を観まくるよ!! それでは皆さま、よいお年をお迎えください!

takahime
※写真はまるっきりイメージです(笑) 劇中の「岩」にちなみ、我が地元、北海道は某海岸の奇岩「三本杉」の写真を使用。だんだんいいかげんになってゆくな~(苦笑)

喜多六平太記念能楽堂「二人の会」

日曜日に、喜多六平太記念能楽堂で「二人の会」を観てきました。
前々から一度観に行きたいと思っていたのですが、今回が最終回ということで、急遽チケットを入手しました。今回、初めて着物で能楽堂に行きましたよ♪

狂言『大黒連歌』
大好きな山本東次郎さんがシテで、きらびやかな装束に身を包んだ大黒さまが縁起を語り舞を舞う楽しい曲でした。爆笑するところはないんですけど、人間国宝ともなると、このように味わいのある演目がよく似合います。
舞の時に、半回転ジャンプを三連続!とても75歳とは思えません!

能『小原御幸』
あらすじ:平家滅亡の折り、安徳天皇とともに入水したが助けられ、大原の寂光院でひっそりと暮らしていた建礼門院は、ある日、後白河法皇の御幸を受け、乞われるまま平家一門の西海での苦しみの有様を語る。

舞は全くなく、動きもほとんどなく、謡がメインの曲でした。お能が初めての人にはちと辛いかもしれません。

謡本持参のお客さんがいつもより多めです。
また、今回は謡曲集と思われる活字本のコピーをお持ちのお客さんもたくさんお見かけしました。この手の観客は、能を研究されている方、日本文学を勉強されている学生さん、あとは能マニアです(笑)

私も以前は謡曲集の詞章を予習して持って行ってたんですが、最近はあらすじが頭に入っていれば特に準備することもなく・・。でも今回は持参して詞章を味わった方が良かったかなぁと思いました。時々、隣のおじいさんの謡本をチラ見してたりしましたが(笑)

そのおじいさんが、謡本をめくったり、コンビニ袋から飴を出したり、水を飲んだり、その度に結構大きな音を立てていて、斜め前で詞章のコピー片手に熱心にメモを取っていたおじさんが、何度も後ろを振り返って忌々しそうにおじいさんを一睨みするのでした。
そういうのって気になり始めると止まらないんですよね。わかりますわかります。

でも私は案外おじいさんの立てる音は気にならなかったんですよね。むしろ風邪をひいていて咳が出そうになるのを抑えるのに必死になっていたので、残念ながらあまり集中できず・・・。あぁ~もったいない・・。

次回、この演目を観る機会があれば、詞章持参で行こうと思います。
でも、この配役の組合せでの小原御幸はたぶん二度とないんですよね・・・。
本当に能の舞台は一期一会であります。

futarinokai

金春流「道成寺」斜入

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※写真はあくまでイメージです(笑)これは道成寺の鐘ではありませんw あと、後シテが蛇なので・・南国風のヘビですがw

道成寺を観てきました。(一昨日ですが)

久々に金春流の舞台を観るのでとても楽しみにしてたのですが、期待通りの素晴らしさでした。

先日、観世流の道成寺を観たばかりで、それも大変良かったのですが、やはり流派の違いでいろんなとこが違って面白いですねぇ。

観世流では曲が始まる前に後見が鐘を運んで設置しますが、金春流では間狂言が鐘を運んで吊すやり方でそれ自体が物語の一部になっていました。(上掛かりの流派は前者、下掛かりでは後者となるらしい)

それから今回は鐘入りがちょっと特殊な入り方で、普通はシテが鐘の中に入って飛び上がると同時に鐘が落ちるのですが、今回のは鐘の外に手を当てて斜めに飛び込んで宙に浮いた瞬間、鐘が落ちました。すぅっと鐘の中に消え入る感じで完璧に決まってました!おぉーー!って感じ。見所からも拍手が起こってましたよ。

鐘入りで拍手って今までにもあったろうか?私はちょっと違和感があったんだけど、結構あるのかな??

この入り方は「斜入」というらしく、金春流の中でも桜間家だけのもの?だと読んだことがあります。いやぁ、今回、観に行って本当に良かったですね。

乱拍子の緊迫感は、どの流派でも毎回すごいです。今回はおよそ30分間でした。観てる方も咳一つするのも憚られるあの異様な雰囲気。おシテさんはもちろんですが、小鼓方大活躍です。酸欠にならないのだろうか~と心配になってまうほどの熱演。

道成寺は観客にとっても面白く人気がある演目ですが、とりわけ能楽師さんにとっては特別な曲で、道成寺を披く(初演する)ことは、能楽師として一人前と認められた証であるのだそうです。道成寺の舞台の何やら厳粛で物々しい雰囲気というのはそこから来るのかなと思います。

道成寺を披く一人の若き能楽師さんのために、お師匠さんも、他のお弟子さんも、流派のお家元も、みんな一丸となって、この日の成功のために、入念に準備し、汗を流すのですよね。舞台が成功したあかつきには、素晴らしい一体感が生まれているのではないでしょうか。

このように能楽師さんにとって人生で数回しかないであろう大切な節目の日に立ち会えて時間を共有できることを一観客としてたいへんに幸せに思うのでした。

また観に行こうっと♪

※間狂言が萬斎さまでしたが、最近しつこくて飽きられそうなので今日はそのネタはなし!(爆)

ハシゴ:謡音読会→花の会

本日は、国立能楽堂(謡音読会)→観世能楽堂(花の会)へ、ハシゴ。
昨日、国立劇場で文楽を観たので、気が高ぶってなかなか眠れず、4時間しか寝ていないうえに寝坊して、道に迷って走ったりして、これは絶対に演能中に寝ちゃうモードですw

で、狂言「月見座頭」の時は、大好きな山本家だったというのに、爆笑劇ではなかったこともあり、ちょっと眠かった・・(本当は名曲なのでもったいない・・)。

しかし、能「屋島」は、面白かった!全く寝るどころじゃないです。

源平、屋島の戦いをベースにした源義経が主人公のお話です。

小書(特殊演出)に奈須與一語が付き、間狂言で有名な「那須与一」(扇の的)の一節を仕方を交えて語るのは、我らが野村萬斎さま。これがまた何とも良い芸なんですね~。語りに引き込まれてしまい、全く目が離せませんでした。中正面の方を向いたときは、何回も目が合っちゃいましたし(←妄想 笑)

シテは観世流宗家、観世清和氏。なんかすごーく良かったです。これまで宗家の芸についてはあんまり印象が無かったのですが(20年以上前のイケメンぶりやマスコミからの扱われ方などばかりが印象に・・失礼ながら)、アレ?宗家、こんなに上手かったっけ??結構やるじゃん!と思いました。(←ナゼに、上から目線? 笑)

まあ、そんなこんなでお能デイを楽しんだ1日でした。

それにしても、なぜ何十回も行っている観世能楽堂に行くのに道に迷ってしまったのだろう。今日の松濤はトワイライトゾーンでした。小春日和の真っ昼間だったけど。

文楽鑑賞教室

文楽鑑賞教室に行ってきました。
演目は「靱猿」と「恋女房染分手綱」。それに、大夫、三味線、人形遣いの方々によるわかりやすい解説もあり、とても面白かったです。

「恋女房染分手綱」(重の井子別れの段)は、文楽で最も私の涙腺を緩ます演目で(能の「隅田川」と二大巨頭です 笑)上演前の大夫さんによるあらすじ解説を聞いている段階でもう胸にこみ上げるものが・・。実際、舞台も感動的でたいへん良かったです。

さて、本来、学生さんのための鑑賞教室です。高校生(中学生なのかも?)の団体や外国人の団体が来ていましたよ。
高校生たちは、玄関前に全員、体育座りして開場を待ちます。とっても賑やか。やっぱり皆で校外に出るとはしゃいでしまいますよね(ちなみに上演中は皆さんとてもお利口さんでした)。
先生が鑑賞時の注意事項などを話します。おしゃべりしない、居眠りしない、椅子など劇場のモノを壊さない(過去にそういうことがあったらしい・・)、などなど。
で、先生は言いました。「“歌舞伎”を観た後は…(以下略)」
先生、観るのは”歌舞伎”じゃありませんから!残念っ!!!

bunrakukyoshitsu

宝生会月並能

宝生能楽堂で宝生会月並能を観てきました。本日の席は、最近だんだん貧乏になってきたので(笑)中正面席、だけど前から2列目です。観客もまばらですこぶる快適快適♪(関係者さんには申し訳ないですが(^_^;))。
中正面席は本舞台を斜めから見る感じになります。中正面席は柱が邪魔で見えない部分が多くなるので通常一番お安い席なんですが、私は舞台全体が立体的に見えるので割と好きです。

本日の演目、能「巻絹」狂言「横座」能「松風」能「車僧」。

古来「熊野松風に米の飯」という言葉があり、能の「熊野(ゆや)」と「松風」は米の飯のように飽きない、という意味らしいです。噛めば噛むほど味が出る、という意味もあるとか。他に、能楽師さんの生活の糧という意味・・と、どこかで読みましたがこれが本当かは定かではありません。
私はこの言葉を聞くとなぜか「巨人・大鵬・玉子焼き」を思い出してしまいます(笑)。どちらも日本人が好きなもの・・ってところで共通でしょ?

「車僧」では、白頭という小書き(特殊演出)がついており、シテは老体ということになりどっしりした格調高い演出となる、と解説にありましたが、シテの近藤乾之助さんは実際でも84歳、白頭でなくても重厚な存在感。時折、後見が立ち上がるのを手助けする場面もありましたが、あのお年であれだけ足腰も上半身もしっかり姿勢を保持して堂々と舞われていたのは、さすが80年近くプロとして舞台に立ってきた大ベテランの貫禄でした。ホントすごいな!

hoshokai

謡のお稽古(3回目)

謡のお稽古3回目。体験稽古から使っていたプリント「鶴亀」(月宮殿の~)は卒業して、今日からは謡本を使い「鶴亀」を改めて冒頭から習います。これまでは拍合(ヒョウシアイ)だったのが、今回は拍不合(ヒョウシアワズ)。拍子に合うか合わないかで同じ符号でも意味が違う・・次から次へといろんな規則が出てきます。規則を理解するだけでも数年かかりそうです・・。
今回、コツが必要だと思ったのは「含」という記号の「フんッ!」と鼻に抜くような発声です。「日月」が「じフんッげフんッ」となる(とても文字では書き表せません…)。う~ん、難しい・・(-_-;)
写真は、能「鶴亀」が舞台で演じられる様子の挿絵です。子方(子どもの能役者)が鶴と亀の冠を戴いてます。そういえば私は「鶴亀」を能では観たことがないような気がします。可愛いらしい鶴と亀の舞を観てみたいものですね。

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