薩摩琵琶・友吉鶴心「花一会〜春におもふ」

本日は冷たい雨の降る中、東京国立博物館の敷地内にある円山応挙館で、薩摩琵琶演奏家の友吉鶴心さんによる「花一会〜春におもふ」を拝見して参りました。

応挙館ですが、江戸時代に尾張国の寺院の書院だったものがここに移築され、現在は茶室としても一般に貸し出され使われているそうです。円山応挙の描いた墨画(複製)が飾られていました(保存の理由から本物は収蔵庫で保管)。最新のデジタル画像処理技術と印刷技術を駆使した・・とのことで本物ソックリ(たぶん)。

鶴心さんの演奏曲は「西郷隆盛」と「春の宴」の2曲。
前者は西南戦争を率いた西郷隆盛の最期を描写した曲で、これは薩摩琵琶らしさが味わえる無情で悲壮感にあふれる曲でした。
後者は源氏物語を題材に金持ち貴族の豪華で優雅な宴を描いており、前者とは対極にある曲風でした。そのためなのか薩摩琵琶的ではないような感じも覚えました。
全く異なる二つの曲を、鶴心さんは曲ごとに琵琶を変えて演奏なさってました。

曲の演奏の前後には曲目解説や時代背景、琵琶のルーツについてなど、鶴心さんのたいへん興味深いお話をたくさん聴くことができました。
NHK大河ドラマの芸能考証・指導を担当なさっている関係もあり、史実や伝説の真偽を考察するのがお好きなようで、歴史の出来事を本当によくお調べになっておられます。

本当は鶴心さんのお話を隣席の英国人の友人に通訳してあげたかったんですが、英語力が貧弱なせいもありますが、実は日本史に疎くて特に近現代史がさっぱりわからないワタクシ。西郷隆盛がいったい何した人かも全然知らないという日本人としてヤバすぎるレベル。そのためせっかくの鶴心さんのお話も前提知識不足で自分自身も理解できなかった部分が多く・・・全くお役に立てませんでした・・・_| ̄|○

今思えば、マンガ「あさきゆめみし」で得た知識で源氏物語の方は説明できたのかも?

反省して、西郷隆盛については、大河ドラマ「西郷どん」観て勉強します〜。

狂言風オペラ「フィガロの結婚」

本日はこれ!狂言風オペラ「フィガロの結婚」@観世能楽堂(千秋楽)

狂言風オペラは、私も大好きだった大蔵流狂言方の故・茂山千之丞さんが始められた新ジャンル。「フィガロの結婚」は2006年に初演、その時には役者は全て狂言師でしたが、2009年の「魔笛」でシテ方が加わり、今回初めて文楽の人形・太夫・三味線が加わったのだそうです。

文楽人形のエロおやじぶりが面白かったとネットで誰かが書いていましたが、勘十郞サマは品がおありになるので、全く下品でないのにちゃんと面白かったので安心しました(笑)

素朴な疑問として、床の太夫と三味線がいつもの位置と左右逆なのは何故だったんでしょう〜?
あと、勘十郞サマが舞台下駄をお履きになっていなかったので(能舞台だから下駄はNGなの?)、左遣いと足遣いがたぶん体勢的にしんどいですよねー(^_^;

シテ方は面をかけていましたが、目付柱が取り払われていたので、ちゃんと舞台の端が見えているのかドキドキでした。あと、登場してからしばらくの間は言葉を発しなかったので、もしやずっと無言なのか!?シテ方のセリフも太夫がアテレコしちゃったらどうしよう〜、と(なぜか)不安になりましたが、ちゃんとシテのセリフ(謡)があり意味もわかったので安心しました(笑)

主役はほぼ狂言方ですが、想像通り狂言とオペラ(特に喜劇)は相性が良い!装束と多少のセリフ以外はあまり狂言の様式にこだわっていない模様で、狂言の枠組みを超えた(これは能も文楽もですが)思い切った演出も結構ありました。

たまたま正面席と中正面席の通路側の席だったので、通路で行われた狂言方のお芝居も至近距離で見られて良かった!

音楽はスイスから来日したクラングアートアンサンブルにより、管楽八重奏とコントラバスにて演奏されました。アリアの部分も彼らが演奏し、とても美しい音楽でした。彼らの衣装は普通に洋服でしたが、全員、足袋をはいていてキュートでした。

実はこの公演、私としたことが全くのノーチェックでした。今日、Facebookの勘十郞さんページや友之助さんの書き込みを読んで、え?そんなのがあるの!と、フラフラ〜と観に行ったんですよね。

東京では昨日と本日の昼・夜で合計4公演、あさって22日には京都、23日には大阪で1公演ずつ行われるとのことです。今日は空席がかなり目立っていてもったいなかったなー(昼はどうだったか知らんけど)。平日の夜とはいえ祝日の前日なのに・・・。昨日の夜はもっと早い18時開演だったので、もっと厳しかったのでは?(余計なお世話か??)

いろいろな意味で、まだ試行錯誤の段階なのかなーという印象を受けましたが、とても面白い企画だと思うので、千之丞さんのご遺志をぜひ後世につないで頂きたいです!

古今狂言会

本日は野村万蔵さん・南原清隆さんの「古今狂言会」を拝見しました\(^O^)/

お二人が十年間取り組まれていた現代狂言シリーズから生まれた新しい形の公演の東京初お目見え。プロの狂言師である万蔵さん、万之丞さんと共に、南原さん(ナンチャン)を筆頭とするタレントさん・役者さんたちが古典や新作の狂言を演じられました。

一緒に観た友人が「タレントさんも上手だったけど、本物の狂言師さんは歩き方や発声が全然違うねー」と申しておりました。彼女は狂言は数えるほどしか観たことがないのに、おぬしなかなか見る目があるな!と感心しました(笑)

今回特に楽しみにしていた、ナンチャン作の新作狂言「AI」(エーアイ)は、ナンチャンが仕事をサボりたがる太郎冠者、万蔵さんが人間型お掃除ロボットという配役。

万蔵さん扮するAI(人工知能)お掃除ロボットが、セリフも動きも可愛らしくてめっちゃ微笑ましかったです(*^o^*)。発声もセリフもあまり狂言っぽさを感じさせなくそれがかえって新鮮でした。

また、お掃除ロボットには体力的にハードであろう動きが多く、かなりお身体をはっておられました(^◇^;) 冒頭に茸(くさびら)みたいなキノコ歩き(しゃがんだまま素速く歩く)にて登場したので、友人は「何かに乗って移動してきたのかと思った!」とビックリしていました。

ナンチャンも十年間、現代狂言で修行(?)しただけあって、堂に入った太郎冠者ぶりでとてもお上手でした(^o^)

「AI」はもう最初から最後まで面白くて笑い通しだったんですが、現代社会への風刺・未来への暗示も感じられました。何かの番組で、あるAIを設計した技術者が、プログラミングした自分自身でさえもこのAIが今後どういう行動をするのかもはや予測不可能になっている、と言っていたのを思い出しました。怖いですね〜(^_^;)

古典狂言の「口真似」「六地蔵」にも遊び心のあるアレンジがあり、最後は普段の狂言公演では行わないカーテンコールもありました。お客さんの誰もが笑顔でした。たくさん笑って楽しい会でした。また行きたい!