新春特別企画「粟谷明生の能楽教室」

喜多流シテ方・粟谷明生さんの新春特別企画「聴いて、観て、舞って、謡って、触れて」の鑑賞と体験の「粟谷明生の能楽教室」に参加して参りました。

※撮影した写真の掲載については、粟谷明生さんより許可を頂戴しております。

二部に分かれていて、第一部は明生さんによる素謡と仕舞を鑑賞。

まずは素謡『翁』。

この曲を聴くと、お正月らしいおめでたい気分になりますねぇ~。

素謡 『翁』  by 粟谷明生氏、佐藤陽氏

それから能の五番立(神・男・女・狂・鬼)に基づき、明生さんが仕舞を舞われました。

それぞれの仕舞の前には能面を見せて頂きながら曲の解説も。

初番目(神)『高砂』

かつては結婚式でも一節が謡われていたおめでたい曲です。先ほど素謡で謡われた『翁』の後に上演されることも多いですね。

二番目(男)『八島』

平家物語を題材にした曲です。『八島』の仕舞は絵になりますねぇ~。どの写真もかっこよくてどれを掲載するか迷いました。

三番目(女)『羽衣』

流儀によって使用する面が異なるのだそうです。喜多流では可愛らしい『小面』を使用。

四番目(狂)『弱法師』

盲目の僧が主人公の曲です。杖を使用して舞います。この曲で使う面の切れ長な目からは意外と視界が開けているそうで、実際にはよく見えているのに、いかにも見えていないように演じるところが腕の見せ所。

五番目(鬼)『船弁慶』

これも平家物語が題材で、平知盛が薙刀をふりまわして暴れ回るかっこいい曲。しかし、他の演者やお囃子方に薙刀が当たらないように細心の注意を払って舞っているそうです。それでいて迫力を出すのだからすごい!

ちなみに、シテが扇以外のもの(杖や薙刀など)を持って舞う曲は難易度が高いのでそれなりの修行を積まないと舞うことを許されないんだそうです。

五番の仕舞を立て続けに舞われた明生さん、しかも解説トークをはさみながらの大熱演。お疲れ様でした~。

休憩をはさみ、第二部は体験コーナー。

装束つけ以外は基本的に全員で体験します。

まずは能面をかけてみる体験。

各自好きな能面を選んでかけさせていただきます。

私もかけてもらいました~。

おぉ~、小さな目の穴ですが、前方は意外と見えます。
近く、特に足もとは全然見えないです。

舞ってみました。
どのくらい扇が上がっているかなど扇が目の前に来ないと見えないので、視覚ではなく身体の感覚のみで腕を上げる位置が決まるようにしておかなければならないのですね~。難しい・・・。

謡体験。
全員で『高砂』の一節を大きな声で謡います。
謡本などは見ないで、明生さんが謡った後に、耳で聞いた通り繰り返すいわゆるオウム返しです。謡のお稽古では一般的な教授方法です。

仕舞体験。
扇の扱い方と基本的な型を2~3教わって最後に全員で舞台上で舞いました。

小鼓体験。
全員が体験できるように七丁もの小鼓が用意されていました。

手組(打ち方、かけ声の型)の説明。今回は三地とツヅケをやってみます。同じ名前の手組でも流儀によって型が異なるんですね~。

まずは明生さんにお手本を見せて頂きます。

鼓の持ち方から打ち方まで丁寧に教わります。
まずはポンポンと各自好きなように打ってみた後、
かけ声も教わって最後はみんなで一緒に打ちました。

装束体験。
お客さんの一人が代表して着せて頂き、解説して頂きました。

明生さんの演技もたっぷり拝見できたし、体験も盛り沢山でみんなでワイワイとっても楽しかったです♪

萬狂言特別公演 六世野村万之丞襲名披露

萬狂言新春公演を拝見しました。

野村万蔵さんのご長男・虎之介さんが六世野村万之丞襲名を披露なさる特別公演であり、また、万蔵さんの3人の息子さんがそれぞれ三番叟、奈須与市語、千歳の披キ(=重要な曲を初演すること)というたいへん豪華な公演でした。

いつでもお披きのお舞台は、拝見する私共もワクワクしながらも緊張が伝わってくるようでつい手に汗をにぎってしまいます。今回もそのような複雑な思いで舞台を見つめます。

しかも、正面席の最前列という幸せ。この歴史的瞬間をしかと眼に焼き付けますぜ!という気分です^^

万之丞となった虎之介さんの三番叟は、名家に生まれて伝統を受け継いでいくという、背負うものの重さをしっかりと受け止め覚悟を決めたかのように思える、非常に気迫に満ちたものでした。

重圧による緊張は極限に達していただろうと想像しますが、進行と共にノリが良くなり、この大舞台を楽しんでいるようにさえ見えてきて、初めてとは思えないほど堂々とした素晴らしい三番叟でした。

同様に次男の拳之介くんの奈須与市語も、これまた初めてとは信じ難い堂に入った熱演であり圧倒されました。

三男の眞之介くんの千歳は一所懸命さが伝わってきてとても初々しかったです(*^o^*)

3人ともきっとお稽古をそれこそ死に物狂いで重ねてきてものすごく頑張ったんだろうな~と胸が熱くなりました。

この貴重な経験を糧にして大きく羽ばたいてくれることでしょう。

ほかにも野村萬さまを始め豪華な出演陣での狂言、小舞、舞囃子など豪華なラインナップで大満足。

最後に上演された「歌仙」は、和泉流固有曲ですが、和泉流の他家の方々や大蔵流の方々が共演され、元々登場人物が多くお囃子や地謡も入って華やかな曲ではありますが、万蔵さんのアイディアでさらにわかりやすく面白く改作されており、ご出演の皆さまのキャラも立っていてたいへん楽しく拝見しました。

ところで、歌仙はおめでたい曲として位置づけられていると本で読みましたが、以前に観た時には、喧嘩して終わる話なので、これっておめでたい話なの?と素朴な疑問を感じていました。

ところが今回は、さっきまで喧嘩していた歌仙たちが一緒にピョンピョンと飛び跳ねながら退場するエンディングが意表をついていて笑いが止まらず、ともかく楽しい気分でお開きとなったのでたいへんヨカッタです(^o^)