張良

本日は観世能楽堂でお能を観てきました。観世流シテ方の松木千俊さんの独立二十五周年記念の会ということで、ほぼ満席、晴れ着の女性も多くとても華々しい雰囲気でした。

勝ち戦の武将が豪快に舞う「田村」も、涙なしには観られない「隅田川」も、我らが萬斎さまの「伊文字」も、すべて良かったですが、私の今回の一番のお目当ては何と言っても「張良(ちょうりょう)」なんです!
「張良」はお能の中では珍しい、ワキが大活躍する演目です。ワキ方の重い習い物(演じるのに特別の許可が必要な演目)とされています。否が応でも期待が高まりますね!

ざっくりしたあらすじ:
黄石公(=シテ)が、ほぅらこれを取ってこい、取ってこられたら兵法の奥義を伝授するぞ、と沓(くつ)を脱ぎ川に投げ落とすと、張良(=ワキ)が川に入り激流にもまれて沓を取ろうと悪戦苦闘するが、そこに突如現れた龍神(=ツレ)が沓を奪い取ってしまった。しかし、張良は剣を抜き果敢に戦いを挑んで龍神から沓を奪い返し、めでたく兵法の奥義を伝授される。
※黄石公=秦代中国の兵法の祖、張良=後に劉邦に仕えた秦代~漢代の軍師

この激流にもまれて沓を取ろうとする場面のワキの動きが、通常の能では見られないダイナミックな型の連続です。身体を大きく反って回転したり、つま先立ちで横歩きしたり(普段は摺り足なのに!)、テンポ良くスピーディに展開します。とてもエキサイティングなこの場面は、この曲一番の見どころとなります。

黄石公が沓を川に落とす場面は、実際には黄石公が沓を脱ぐのではなく、後見が後ろから沓を舞台前方に投げます。ここがちょっとした緊張の場面。舞台から落ちないように投げなくてはなりません。で、今日はもう少しで舞台から落ちるんじゃないかというギリギリの端っこに着地しました!

前回、張良を観た時も舞台の端っこに着地して、投げた後見が「アッ!!」という表情をしたのが見えたのですが、今回はおシテさんの蔭になって投げた瞬間の後見さんの表情は見えず。しかし、後見座に下がった後の平然とした表情を拝見するに、ふふん、オレのコントロールどんなもんだい!という自信にすらあふれて見えました(笑)実際、舞台の真ん中などに落ちてしまったら、張良が動きにくくてしょうがないでしょうから、ぎり端っこに落とすのがベストなんでしょうね!

今回、張良を演じられた村瀬提さんは福王流のワキ方です。しゅっとしたイケメン能楽師さんでしたね(笑)福王流というのは人数がとても少なく、東京には数人しかいないと聞いたことがあります。流派による違いというのは(張良をそんなに観たことがないこともあり)よくわかりませんでしたが、流派の芸を今後につないでいって欲しいですね~。

今日は後ろのオバチャンたちがずーっとおしゃべりしたり何やらゴソゴソしていてなかなか集中できなかったのですが(私もまだまだ鍛錬が足りませぬ・・)、張良を観たらスカッとしてイヤなこと全部忘れてしまいましたよ(*´▽`*)

※写真はイメージです!沓はこんなのでなく中国風のでしたよ。大中に売ってそうな(笑)

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お稽古日記ー仕舞も始めました

今年初のお稽古日記。年も明けたし、新たな気持ちで、新しいことに挑戦だ!

■謡
「今回は拍合です。前回の拍不合の規則はいったん忘れてくださいね」と先生に言われ・・、前々回に拍合をやっているんですけど、もうすっかりその規則忘れてしまっています(汗) 物覚えの悪さ天下一品(-_-;) 何となく謡えていたのは耳コピーと暗譜のおかげだったのか。再度、記号とルールの整理をば・・と赤ペン先生ごとく謡本に記入して復習です。

■仕舞
今月から仕舞のお稽古を始めました\(^_^)/ \ワーイ/
他のお弟子さんのお稽古をある程度様子見してからやるかどうか決めようと思ってたんですけど、見る機会が巡ってこないうちに、まぁとにかく始めてみれば何とかなりますかね、とお気楽に開始宣言しちゃいました。
そして始めてしまってから、他のお弟子さんのお稽古をようやく見ることができたのですが、うぅ~なんかものすご~く難しそう・・。自分にできるのだろうか?とちょっと不安になりましたが、とにかく頑張ってみますよ!

初回はお作法のお稽古から。舞い始める前・舞い終わった後の歩き方や構え、扇の開き方・閉じ方。あとは能の歩き方を少し。舞う前から美しく!,゜.:。+゜とのご指導です。和服の着付け用に買った姿見、仕舞の練習にも使うことにしよう。 次に能を観に行くときは、仕舞のお作法を特に凝視してしまうと思いますw

「養老」という曲の舞を習います。先生に見本で舞っていただきました。プロの舞を至近距離で拝見できるのもお稽古する者の特権。勉強のために動画を撮らせていただきました。秘蔵映像として一人で楽しみますよ♪・・もとい、よく拝見して勉強いたしますよ~(@^▽^@)

能の動きは、以前習っていたベリーダンス(辞めたわけではない、休んでるだけ・・のつもり)や先日温泉旅館で友達にちょこっと教わったバレエとは全く違う動きですよねー。特にバレエとは真逆な感じです。でも、姿勢を良く保つ必要があるのが踊り系は皆共通しています。普段、姿勢が悪くなりがちな仕事をしているので、これで姿勢を正したいと思いますわ(*´▽`*)

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新春浅草歌舞伎「勧進帳」

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ご近所の浅草公会堂で、新春浅草歌舞伎「勧進帳」を観てきました。いやぁ~、好きな演目なんです。

「勧進帳」は元々、能の演目「安宅」のパクリ、いや、リスペクト作品です(笑)能が題材になっている歌舞伎や文楽の演目は、松羽目物といって、舞台の大道具や衣装が能そっくりとなっております。
台詞まわしも能の形式を取り入れており、長唄の中に謡曲風の節回しがあったり、お囃子も鳴り物による演奏だったり、間狂言の衣装までマネしていて、かなり能に近いです。

ワタクシ、能の演目の中でも「安宅」が大好きなんですよ。能にしてはお芝居色がより一層強い感じで面白くて全く飽きない。そういったエキサイティングなストーリー展開もあって、歌舞伎との歩み寄りが起こりやすかったのかも知れませんね。

武蔵坊弁慶役は、市川海老蔵さん。新春浅草歌舞伎にはなんと14年ぶりの出演だそうです。新年を言祝ぐ「口上」を含め、エビゾー(親しみをこめてこう呼ばせていただきます( ̄ー ̄))は、今回公演の全ての演目に出演です。
エビゾーが初めて弁慶役に挑んだのもこの浅草だそう。当時まだ21歳であまりの大役に抜擢され「緊張するタイプではないが(笑)、足が震え、手が震え、言葉が出てこなかった」そうです(口上より)。

「勧進帳」の弁慶といえば、現役の歌舞伎役者では何と言っても松本幸四郎さんですよね。既に1000回以上も演じてます(スゲー!)私も幸四郎さんの弁慶が一番好きです。てか、歌舞伎役者の中で一番好き。かっこいい~(●^o^●)

今日のエビゾーを観ていたら、幸四郎さんに比べると勧進帳の「読み上げ」など演技の部分は少しあっさりしている?ような印象を受けましたが、見得や舞はたいへん良かったと思います。豪快なうえにも美しさがありましたよ!

最後に花道で「飛び六方」を見せるのですが、三階席ゆえ残念ながら視界の外だったので、そこは想像で!「成田屋ッ!(*´▽`*)」

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※写真はエビゾーからの連想です(笑)

野村狂言座

今年初の能楽堂、昨日、狂言の会に行って参りました。
野村万作さまが定期的に行っている「野村狂言座」。演目は「鍋八撥」「素袍落」「業平餅」狂言のみ三番で解説つき。それと素囃子「男舞」。もちろん萬斎さまもご出演です♡

会場は少々、女子率高めな感じ(年齢問わず)? 狂言の会だからというのもあるかも。

そうそう、私の母も萬斎さまを大のお気に入りで、正月に帰省したときも萬斎イイ、萬斎オモシロイと連発してました。母は狂言の舞台を一度も観たことが無いのです。無いというのに何故に好き?テレビの「ぴったんこカンカン」で安住アナに狂言を教えるところを観て好きになったそうで。なるほどー。今度東京に遊びに来た時には、ぜひホンモノの狂言の舞台を見せてあげたいと思います。

正月のお能といえば「翁」でしょうが(もちろん「翁」もこれから観に行きますけどー)狂言の会で笑い初めするのも、縁起が良いですね~。狂言のみ、というのも気楽でいいです。予習も要らないし。お正月ということでおめでたい演目もあり、気持ちよく終わる作品ばかりでとても楽しかったです♪

「業平餅」は平安時代の歌人・在原業平が主人公。業平役は萬斎さまでした。最近、萬斎さまを見る時は、間狂言(能の一部として演じる狂言)か、頭の回転が速く悪知恵が働いたりいたずらをしかけたりするような役ばかりだったので、今回のちょっとのほほ~んとしてアホっぽい(笑)業平の役は、また全然違った味が出ていてなかなか面白かったですよ。

そして、万作さまの可愛らしさといったら・・!あんなに可愛らしい82歳がいるものでしょうか!?「業平餅」では、業平に醜女をおしつけられる傘持ち役を演じましたが、二人のおとぼけコントがもう秀逸!二人とも最初はその娘の顔も見ずに嫁にもらおうとするのですが、娘の顔を見た瞬間の萬斎さまの驚愕の様子(演技っぽくなく素に見えた 笑)、そして、万作さまの思いっきり腰を抜かす演技(本当に腰が抜けてしまったのではないかと心配になりました・・(^_^;))。もう会場、大爆笑です!そして最後は色男の業平が押しの強い醜女にすっかり惚れられて追いかけられて終わるお約束のパターン(笑)

不細工な女性を笑い物にする作品ではありますが、狂言に出てくる女性は強くてたくましいので、全くイヤな感じはいたしません。色男親子は、実際にもそういうこと過去にあったかもしれませんネ(笑)

さて、近頃はイメージ写真の作成にはまっていたのですが、正月ボケか、写真のネタがすぐに思いつかなかったので、今回はイラストを描いてみましたよ。「業平餅」の主人公、在原業平です。少女漫画風(笑)
今回、席が最後列で、萬斎さまのお顔が良く見えませんでしたので、イラストはあくまでイメージです!!
narihiramochi