本日は能楽堂が初めてという友人と共に「狂言ござる乃座53rd」@国立能楽堂へ。初めての人を能や狂言にお連れする時は気に入って頂けるかどうか非常に気になります。その点、狂言というのは能より親しみやすいと思うので最初の一歩としてはまずよろしいのではないかと。
「梟山伏」
シテ(山伏)は萬斎さまのご長男・裕基くん。この演目は狂言らしい定番曲で素直に笑えます。
梟に取り憑かれた男の兄に頼まれて加持祈祷をする山伏ですが、兄や終いには山伏自身にも梟が取り憑いてしまう。ミイラ取りがミイラに。三人が発する梟の鳴き声や梟っぽい仕草などとても笑えるんですがシュールな怖さも感じます。
裕基くん、ちょっと見ないうちに大人の声になっていました。少し前までは少年の声だったのに。日々成長しておりますね。
「見物左衛門」
シテは萬斎さま。これは狂言では珍しい全くの独り芝居です。公演プログラムによると難曲・稀曲とありましたが、ごく最近見たような気が・・・。そう、昨年の10月に万作さまシテで拝見したばかりでした。でもその時には確か相撲見物のシーンがあったのに今回はなかった。
前回を思い起こすと「深草祭」、今回は「花見」という小書で全く内容が違うのだそうです。要は見物左衛門という男がいろいろ見物して回るただそれだけの話です。「花見」は一人で京都の名所を巡って花見をし酒を飲み謡ったり舞ったりひたすら気ままに過ごす一日の話です。特に笑いの要素はありません。これといったストーリーはなくシテの芸を楽しむ演目と言えます。たった一人で観客に情景を想像させなければならないのは難曲たる所以ですね。
私は小謡や小舞がとても好きなので、こういった曲は大好物で今日もとても楽しめたのですが、やはり万作さまの深草祭の方がより味わい深く感じられたように思います。深草祭は笑いの要素もあったように記憶しているので取っつきやすかったというのもあるかもしれません。
萬斎さまが「入り込むまでに少々忍耐がいる」と述べられていたのはその通りだと思いました。友人は狂言にこのような類の笑いなしの演目があるとは知らなかったとの感想でした。でも感触は悪くなかったようです。さあ次へ。
「鬮罪人」
シテ(太郎冠者)は萬斎さま。怖い主人が出てくる「三主物」の一つです。めったに出ない曲ではあるが何度も勤めていると萬斎さま。
怖い主人を演じたのは万作さまでしたが、これが本当に怖かった!!出しゃばりの太郎冠者が最初は主人に諫められているところ客たちの支持も得てどんどん調子にのり、終いに主従の立場が逆転してしまうのですが、それでも圧倒的な怖さで太郎冠者を封じ込める主人の迫力が凄かったです。舞台で怖い万作さまはあまり見たことがないのでちょっと新鮮でした。
萬斎さまが、万作さまはとても厳しくてお稽古の時に扇が飛んできたりするというお話されていたことがあり、今日の太郎冠者の主人に対するビビり方(何度も腰を抜かしてました)は、子どもの頃にお父様から受けた怖い印象の経験が生きているのかしらんと思ったりしました(笑)
友人は万作さまのことを初めて知ったそうですが、他の演者を超越する芸格の高さを肌で感じた様子でした。
三番のそれぞれ趣の異なる狂言を観て、友人も気に入った様子でまた行きたいと言ってくれました。能や狂言に親しんでもらうには最初が肝心なのです。最初のお役目は無事果たせたとホッと胸をなでおろしました。