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第95回粟谷能の会「道成寺」(中編)

鐘が吊り上げられ妖しくも美しい白拍子が登場したところで前回は終わりました。
前回まで⇒ 第95回粟谷能の会「道成寺」(前編)

これが後編と思いきや、書いているうちにどんどん長くなって、まだ中編です。もうしばらくおつきあいを~。

乱拍子とは、シテが小鼓と息を合わせて独特のリズムで足拍子を踏む舞です。動きが止まっている時間が長く、その分、小鼓のかけ声・打音とシテの足拍子の瞬間の迫力がすごいです。シテと小鼓の一騎打ちとも言える緊迫した場面です。

最初はまっすぐ正面を向いていた小鼓方の大倉源次郎さんが、床几ごと体の向きを少し斜めに変え、シテの方を見る格好となりました。
シテと相対する準備万端です。ここからは二人だけの世界に入っていくのです。源次郎さんの真剣な表情が凛々しすぎる!おシテの明生さんもお顔は見えませんが能面の裏側は真剣な面持ちであったことでしょう。今、この二人は精神的に強く結び付きあったのだ…!この情景を傍から見ながら、二人の青春は私の青春、このままずっと見ていたい、などと妄想(笑)

喜多流では、道成寺は幸流の小鼓方が勤められるのが通例だそうで、おシテの粟谷明生さんも披き(初演)では幸流の小鼓方と共演されたとのことです。二度目の今回は大倉流の小鼓方との共演を望まれました。実際に演じてみてどのような違いがあったのでしょう?私は残念ながら初演を拝見していないので違いを知る由もありませんが、明生さんご本人は大いに感じるものがおありになったことと思います。

シテが小鼓のかけ声と打音に合わせて、つま先やかかとを上げたり下げたりひねったりして少しずつ足を動かし、そのとき動きが完全に止まっている間がしばし続き(乱拍子がラジオ放送で無音事故になったことがあるというのは本当なのだろうか)、そして足拍子、という動作が基本なのですが、この舞と言えるのかどうかもわからない奇妙な動きにどういった意味があるのか未だよくわかりません・・σ( ・´_`・ )。oO

意味・・・?能の動きに意味を求めるのはナンセンスなのかもしれません。能は観る者がそれぞれ想像力を働かせて感じる芸能です。しかしあえて意味を考えてみました。

乱拍子の解釈は多々あると思うのですが、鐘楼への階段を昇る白拍子の歩みを表しているという一説がありました。なるほど~、一理あります。だから足づかい中心の動きなんだと説明がつきます。

私は白拍子が鐘に近づくために足技を使って妖力をかけているんじゃないかという気がしてきました。白拍子が舞っている最中に人々は眠ってしまいます。これ、催眠術をかけられたんじゃないですかね?足づかい中心なのでどうしても一点を注目することになりますよね。一点を見つめていると暗示にかかりやすくなるのでは。5円玉揺らす代わりに足を少しずつ動かして見せる。科学的根拠は全くないですが、そんな妄想を巡らせてしまいました(笑)

静寂の中で、小鼓のかけ声と音、足拍子の音、そして時折の笛の音のみが響き渡り、見所には異様な空気がはりつめています。少しの物音もたててはいけないそんな雰囲気です。舞台上には妖力が満ち満ちている。それを観客が傍観しています。妖しく美しい女性がこれから何をしでかそうとしているのか固唾を飲んで見守っているのです。感覚は研ぎ澄まされ、一つ一つの動きや音も逃すまいと舞台に目と耳が釘付けになります。そして舞台上から流れてくる妖力の影響を受けた一部のお客さんは夢の世界に(笑)

ワタクシこれまで数知れぬほど道成寺を観てきてますけど、乱拍子でこれは素晴らしいと唸らされたものは本当に数少ないです。正直申しますと、途中でちょっと飽きてくることが多かったです。だからよく時計を見てしまうのですが、今回は舞台から目が離せず時間を見るのもすっかり忘れていました。実際には長くもなく短くもなく…だったのでしょうか。感覚的には5分か10分で終わってしまったように思えるほどあっという間でした(あぁ~もっと観ていたかった…、けど、やる方はしんどいっすよね。笑)。

明生さんと源次郎さんのこの上ない素晴らしい共演、ひとつひとつの動作や発音が丁寧に扱われていて、息もぴったり合い真剣な中にも楽しそうにノッている様子ですらある。記憶には映像と音声がしっかり刻み込まれて、思い起こすといまだに鮮明に蘇りますが、なぜなのか言葉にしたくてもこれ以上うまく言葉にできないのです~。あぁぁ、語彙不足で本当に申し訳ない。そんなわけで、実際の映像は4月27日のNHKの放送をご覧ください(笑)

乱拍子の終盤にシテ謡があり、大鼓の演奏が再び入り、とたんにお囃子がにぎやかモードに。シテも激しく舞いだします。急ノ舞です。この急展開で妖力によって眠らされていたお客さんたちも覚醒します(笑)

さあ物語はいよいよクライマックスへ。つづきは明日です!

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第95回粟谷能の会「道成寺」(前編)

このところ毎回拝見してはまっております喜多流・粟谷能の会。今回は道成寺ということもあり、SS席を奮発いたしましたよ~。正面席、前から2列目ど真ん中。最上級のお席です。この幸せに感謝であります(*´▽`*)

<ざっくりあらすじ>
道成寺で鐘を再建することになり、寺の能力が新しい鐘を吊り上げる。女人禁制の鐘楼に、能力は白拍子を入れてしまう。白拍子は舞いながら鐘に近づき、鐘の中に入ってしまう。と、同時に鐘が落ちてしまった。能力は住僧に鐘が落ちたことを報告すると、住僧は鐘にまつわる話をし、祈祷で鐘の呪いを払おうとする。すると鐘が上がり、中から蛇が現れる。蛇と僧たちが闘った末、僧たちが勝利し、蛇は日高川に逃れていく。

下掛り流儀なので、アイが芝居がかりで鐘を運んで設置します(上掛り流儀(観世・宝生)の場合は、最初に後見が運んできて設置する)。鐘の重さは80キロほどあるそうですので、実際にはアイ2人、後見2人が鐘の竜頭に通した太い竹の棒を担ぎ、後見2人が横から鐘を支えて、6人がかりで運んできます。アイの野村萬斎さん、深田博治さんが「えいやーえいとーなんと重い鐘ではないか~」などと途中挫折しそうになりながら運ぶお芝居をします。鐘はかなり高さがあるので(人ひとりが入るんだからそりゃそう)担ぐ4人は両手を高く掲げて棒を持ち上げ、つま先立ちで歩いてきます。重いものを担いでつま先立ちで歩くのはさぞやキツいことでしょうなぁ。

鐘は鮮やかな緑色でした。ワタクシ喜多流の道成寺をこのところしばらく観てなかったようです。道成寺の鐘っていうと紺色か紫色のイメージがありました。でも、緑色がホンモノの鐘の色に一番近いかも~、いいかも~。

舞台中央まで行きますと、アイが鐘を吊るします。能舞台の天井に滑車が設置されていて、そこに鐘の竜頭に付けられた綱を通します。天井に届くくらいの長い竹の棒が二本用意されます。綱の先端は輪になっていて、まずは先が二つに分かれた竹の棒の先に綱の先端部分を挟み、天井の滑車に綱の先端(輪の部分)を差し込みひっかけます。そして、先に鉤がついているもう1本の竹の棒で綱の輪をひっぱると、挟んである方の竹の棒がはずれ、滑車に綱が通ります。いつも思うのですが、能の作り物や道具は本当によくできているなぁと感心します。動きに無駄がでないように合理的にできています。

しかし、今回、珍しく鐘を吊るのにかなり手間取りました。竹の先端に綱を挟む時もすんなり挟まらず。深田さん少し緊張?うまくいかないことが多い、綱の輪っかを滑車にひっかけるのは一発で成功したのですが、そのあと、滑車がぐるぐる回ってしまって思い通りの向きに定まらず、綱がどうしても真っ直ぐかかりません。しまいに電話の受話器のコードのようにこんがらかってしまいました。綱が真っ直ぐになっていないと、鐘を落とす時にたいへん危険です。何度も直そうとするのですが、なかなかうまくいきません。いったん萬斎さんが鐘を吊るときのセリフを言い始めましたが、萬斎さん、思い直したようにセリフを止めまた綱をほどいてやり直し始めました。見てる方もなんだかハラハラです(゚д゚;) リトライの結果、今度はきれいに綱がかかりました。こちらも思わず「ヨシ!これで大丈夫!」と心の中でガッツポーズ。改めて鐘が吊りあげられ、演技再開です。

さあさ、鐘が吊り下がりました。能力(アイ)は住僧(ワキ)に「女人を入れてはいけないよ~」と命じられています。

そこへ、白拍子(前シテ)が妖しげな雰囲気を醸しながら登場します。

本日のおシテは喜多流・粟谷明生さん(58歳)です。道成寺は2回目とのこと。披きのフレッシュさとまた違った円熟味を見せていただけることを大いに期待ですっ!!\(o^▽^o)/

鐘の供養をしたいと申し出た白拍子に、能力は舞って見せるなら~とあっさり許可してしまいます(あらあら~)。

そして、白拍子が烏帽子をつけて舞い始めます。「乱拍子」という独特の舞です。

長くなりましたので、つづきはまた明日に。

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第95回粟谷能の会 事前講座

3月に拝見する予定の第95回粟谷能の会(喜多流)の事前講座に行って参りました。
今回は「道成寺」がテーマ、初の夜開催、また、小鼓方大倉流宗家・大倉源次郎さんというビッグなゲストをお迎えするということで、これは絶対に行かずにはいられない!会社を早退して国立能楽堂の大講義室に駆けつけましたよ~。

前半は、今回、道成寺でシテを勤められる粟谷明生さん、明生さんのお弟子さんで私の朗読のお師匠さまでもある女優の金子あいさんによって、道成寺という作品のあらすじや見どころ、シテを演じるにあたっての意気込みなどが語られました。

道成寺を年に2~3回は観ているワタクシですが、演者さん自身からお話を伺う機会は滅多に無いので、初めて知るお話がてんこ盛りで目からうろこが落ちまくりでした。

「鐘入り」ではシテの足がすっぽり隠れるような入り方、すなわち鐘が落ちるより先にシテが落下しないよう飛ぶことが良しとされています。そりゃ頭ぶつけないように飛び込むのは至難の業だろうな~足見えちゃっても仕方ないよな~とこれまで思っていたのですが、明生さん曰く「頭にガーンと衝撃があったら、きれいに飛べている」・・・そうだったのか!ちょっとどころじゃなくしっかり頭ぶつけてるんですね。こりゃビックリ w(゚o゚)w キレイな鐘入りは見たいですけど、どうかお怪我なさいませんように~~~。

後半は小鼓の大倉源次郎さんもトークに加わり、主に「乱拍子」について、流儀による違いやシテと小鼓が呼吸を合わせるそのヒミツなどが語られました。

小鼓方四流の中で幸流だけは「よっ」ボン「ほっ」ボン、みたいにかけ声が短い。今回は大倉流で「ぃよぉーーーーっ」ポン「ほぉーーーーっ」ポン、みたいな感じでかけ声が長くなります。そのためシテと小鼓の呼吸の合わせ方や間合いが大きく異なってくる。なるほどーーー。同じ乱拍子でも何か雰囲気がだいぶ違うと感じたのはそのせいもあったのか。

シテ方や狂言方の流儀の違いは巷でもよく話題に上るし、舞台を観ていてなんとなくわかることもありますが、囃子方やワキ方の流儀の違いは正直これまであまり意識することがありませんでした。しかし、お話を聞くとこんなにまでも違っていてそれが他の役にも大きな影響を与え、全く異なった舞台を生み出すのだということがわかり、こりゃオモシロイ。これからもっと注目して観ようと思いました。

喜多流では幸流の小鼓での道成寺が通例だそうで、明生さんも初演は幸流であり、二度目である今回はぜひ大倉流で!と望まれ豪華共演が実現する運びとなりました。ラッキー\(^O^)/

その他にもたくさんのお宝話が飛び出しましたが、長文になりすぎるので以下省略します(*-∀-)ゞ

「美」と「妖」が交錯する雰囲気、乱拍子に続き急の舞となり、蛇となって鐘に飛び込むその変化を見て欲しいと明生さん。「精神は高め時間は短縮される演出」を目指す、と締めくくられ講座は終了しました。事前講座により演目に関する理解が深まり興味がいっそう掻き立てられ演者さんたちの意気込みもしっかり伝わってきて参加して良かったです(*’▽’*)アリガトウー!

精神が高まることでまた濃厚な舞台が生まれるのでしょう。3月2日の「道成寺」では、1年前の粟谷能の会の「船弁慶」で感じた、演者のエネルギーを観客が受け取り、舞台と見所が一体となる感覚をまた味わいたい、いやそれ以上のもの凄いことが起きるに違いないと大いに期待しております!!

第95回粟谷能の会 事前講座
2014年2月12日(水) 18:00~19:30 @国立能楽堂 大講義室
<出演>
粟谷明生さん(シテ方喜多流)
大倉源次郎さん(小鼓方大倉流宗家)
金子あいさん(女優)

※主催者および出演者に写真撮影および掲載の許可を得ています。

60名以上のお客様がご来場。
60名以上のお客様がご来場。
最前列に陣取りました。
最前列に陣取りました。
進行役の女優の金子あいさんと、道成寺のシテを勤められる粟谷明生さん。
進行役の女優の金子あいさんと、道成寺のシテを勤められる粟谷明生さん。
 明生さん、道成寺を勤められるのは2度目だそうです。お父様の菊生さんは生涯1度だったそうです。初演の演技を振り返り二度目に臨む決意を語ります。
明生さん、道成寺を勤められるのは2度目だそうです。お父様の菊生さんは生涯1度だったそうです。初演の演技を振り返り二度目に臨む決意を語ります。
 道成寺のあらすじを紹介するあいさん。
道成寺のあらすじを紹介するあいさん。
 鐘を作る話が興味深かったです。鐘(に限らず道具は全て)は能楽師さんらが自ら手作りします。木製で周りにわらを巻き、竹で土台を作って布を被せて縫い付けます。最初から作ることもありますが、途中まではできていて、5~6人で2日ほどで完成。
鐘を作る話が興味深かったです。鐘(に限らず道具は全て)は能楽師さんらが自ら手作りします。木製で周りにわらを巻き、竹で土台を作って布を被せて縫い付けます。最初から作ることもありますが、途中まではできていて、5~6人で2日ほどで完成。
 大倉源次郎さんがトークに加わります。大倉流の宗家というので高嶺の雰囲気を想像していましたが、お話も上手で親しみやすく気さくなお人柄。
大倉源次郎さんがトークに加わります。大倉流の宗家というので高嶺の雰囲気を想像していましたが、お話も上手で親しみやすく気さくなお人柄。
 小鼓を実際に鳴らしていただきます。音の種類が4種類ありチ・タ・プ・ポと表現されるなど実演付きで解説。
小鼓を実際に鳴らしていただきます。音の種類が4種類ありチ・タ・プ・ポと表現されるなど実演付きで解説。
 左手の握り方と、右手のどの指で(何本で)打つかで、音の種類が決まるわけですね。
左手の握り方と、右手のどの指で(何本で)打つかで、音の種類が決まるわけですね。
 打つ姿があまりにカッコいいので何枚も撮影してしまいましたぁ~(*´▽`*)
打つ姿があまりにカッコいいので何枚も撮影してしまいましたぁ~(*´▽`*)