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夜桜能 第三夜 「二人静」

前夜に引き続き夜桜能です。
前夜⇒夜桜能 第二夜 「小鍛冶」

天気予報では雨のち曇りだったのですが…朝から降り続く雨がいっこうに止む気配がなく、それどころかだんだん本格的な雨になってきました。

で、案の定、会場変更に。靖国神社→新宿文化センター大ホール。

新宿文化センターはちょいとばかり不便な場所にあります。テンション下がります…。

3日間のうち本日だけ行かれた方は本当に残念でしたが、私は前日に靖国神社で観られているのでまだ救われます。能舞台じゃないっていうのは残念ですが、千人以上を収容できる能楽堂は存在しないのでいたしかたありません。

雨が本降りとなり新宿三丁目の駅に降り立つと、夜桜能のチラシを手に持ち行くべき方向を迷ってらっしゃる風のおばあさんが。案の定同じ目的地でしたので、おしゃべりしながら会場までご一緒しました。
義理でチケットをお求めになり横浜からおひとりでいらしたとのこと。お能は見たことはあるけどそう多くもないとおっしゃっていたので、今日の演目のことや出演者のことなどいろいろお話しました。せっかく遠くからいらしたのに夜桜じゃなくて残念。でも、楽しんで帰られていたらいいなぁ。

私にとって今日の目当ては夜桜というよりも「二人静」という演目でした。

静御前がとり憑いた菜摘女(ツレ)と、静御前自身の亡霊(シテ)が、鏡映しのように全く同じ装束を着て全く同じ舞を舞います。

能の場合、相舞は難しいものであるようです。

能面をかけていて視界が狭いため、相手の動きはほどんど把握することができません。音や気配でかすかに感じることぐらいではないでしょうか。

舞の型は決まっているので同じ舞を舞うことはできましょうが、ぴたりと合わせるのは非常に難しいと思われます。

動作が寸分の狂いもなく合ったとしたらそれこそ神技です。見えていないのですから。動きをぴったり合わせる必要はないのかもしれません。息は合っていなければいけないとは思いますが。

一卵性双生児のシテ方がいたとしたら、何もしなくても自然とぴたっと合わせることができそうな気がして、そういうチャンスが巡ってこないかなぁと思ったりもしますが。

まあ、今回も実際ぴったり合ってなかったということなんですが(笑)全く合ってなかったわけでもなく、シテの方がツレより若干ゆったりめに舞っていたのがちょうど良い感じでした。

伝承としてはぴたりと合わせて舞うということなんだろうな、と観ていて感じますが、少しずらす演出も面白そうだなと思ったりして。地謡とお囃子もあるので、そう単純にはいかないでしょうが、ほんの少し、0.5秒ぐらいずれていたら、静御前本人の重みが出るような気がします。

二人の静は全く同じ装束を付けていて扇の絵柄まで一緒なので、油断するとどっちがどっちなのかわからなくなりそう(笑)今回は身長差があったので、混乱しなかったですが。あと、年齢差がありましたので、やはりベテランはベテランらしく、若者は若者らしく舞われていたと思います。

ストーリー性はあまりない曲なのですが、とにかく舞が中心なので、やっぱり桜の下で見られた方が幽玄な雰囲気は楽しめたかもしれません。でも簡易能舞台でもお能はお能。出演者も豪華でとても楽しめました。

ちょっと能の相舞に興味が出てきました。
吉野天人という曲で天人揃という小書のときは天女がたくさん出てきて一緒に舞うので壮観です。私が観たのは7人でした。しかし数が多い方がごまかしがきくといったら聞こえが悪いですが観る方の視線が分散するので、やはり二人というのが一番難しいのだと思います。しばらく「二人静」にはまってしまいそうです。

狂言「蚊相撲」は、蚊の精が出てきて「ぷぅーーーーん」というセリフ(?)があったり、動きも面もユーモラスでとても楽しいお話です。最後に大名である野村萬さんが蚊になってしまい「ぷぅーーーーーん」と言いながら去るのがとても可愛かったです(*´▽`*)

帰宅時にはさらに雨が激しくなっていて、これで桜の花も見納めかな。来年の夜桜能を楽しみにしたいと思います!

奉納 靖国神社 夜桜能(第三夜)
4月3日(木)19:10~
@新宿文化センター大ホール(雨天会場)
舞囃子「安宅」
狂言「蚊相撲」
能「二人静」

舞台上には桜の花が飾られ夜桜能の雰囲気を演出
舞台上には桜の花が飾られ夜桜能の雰囲気を演出
新宿文化センター大ホール。2階席まであり約1800人収容できます。
新宿文化センター大ホール。2階席まであり約1800人収容できます。

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夜桜能 第二夜 「小鍛冶」

奉納 靖国神社 夜桜能(第二夜)に行って参りました。

第一夜は晴れて暖かく桜は満開で最高の薪能日和であったそうです。第二夜は夜が深まるにつれ雨が広範囲で降り出すという予報。

16時半に当日の会場が発表されます。雨天の場合は代替会場になりますが、とりあえず靖国神社での開催が決まり、胸をなで下ろします。あとは終演まで降らずに持ってくれることを祈るばかり。

昨年は桜の開花が異様に早く、夜桜能の時期にはほとんど散ってしまい葉桜能となってしまったのですが(笑)今年は満開真っ盛りの時期に当たりまさにどんぴしゃのタイミングです。

まず靖国神社に着いて驚いたのは、花見客の多さ!レジャーシートを敷いて宴会している人々や屋台もたくさん出ていて昨年とは全然違う雰囲気に面食らいました。屋台から食べ物の美味しそうな匂いが漂ってきまして、そっちにふらふら行ってしまいそうになります(笑)

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昨年の夜桜能。花見客などおらず閑散としている。

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それが今年はこのように!
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連なる屋台と花見をする人々。

さて開場時間となり境内に入ります。一般の参詣客が18時からは境内に入れなくなり残念そうに表門の写真を撮っていました。

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開場前。行列する観客達。
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一般参詣客は18時以降入れず立ち尽くす。中には当日券を買って入る人も。

まずは無料の雨ガッパが配布されました。有料ですがひざかけレンタルやイヤホンガイドもあります。昨年も感じましたが、この公演はサービスやスタッフの対応がとてもきめ細かく、観客への気配りが行き届いていてとても気持ちが良いです。

屋外能の場合、寒いのに簡易トイレだったりして、お手洗いに行くのを躊躇しがちなんですが、ここの場合は参集殿のきれいなトイレが使えるのでとても快適です。

千円でプログラムを購入。桜色の表紙のしっかりしたプログラムです。能の詞章も載っています。

プログラムも桜色~♪
プログラムも桜色~♪

境内に入りますと、すぐに能舞台がありますが、わぁーーーー!予想通り桜が満開だぁ!!(*´▽`*)♪

能舞台は120年の歴史があり黒々としていて荘厳な雰囲気が漂います。舞台上に散る桜の花びらがまた風流であります。

脇正面席4列目です。二千人ぐらい?は収容できると思われる野外能。後ろの方では雰囲気は楽しめてもお能自体はあまり見えないと思い今回もSS席を奮発しました。

最初に火入れ式があります。4人の火入れ奉行が裃姿で松明を携え厳かに登場、本舞台の左右に設置された薪に御神火を灯します。薪のすぐそばの席で観ていましたが、なかなかつかず最後にボッと音をたてて超特大の炎が上がったので私は思わずぅわぉっ!と声を出してしまい…周りの方ゴメンナサイ_(_^_)_

屋外で声が後方まで届きにくいのでスピーカーが設置されています。演者はワイヤレスマイクを仕込んでいるようです。昨年はスピーカーから聞こえる声が違和感でしたが、慣れたのか今年は特に気にならず。

舞囃子「三井寺」。桜の花びらが舞う中で裃姿のシテが舞うのを見るのは風雅なものです。もうすっかり江戸城の将軍様気分です。

狂言「宗八」。野村万作さん、萬斎さん親子がご出演。元僧侶だった料理人と、元料理人だった僧侶がそれぞれ主人に魚を料理することと経を読むことを命じられますが、お互い新米のため思うようにできず、それぞれが教え合うことを提案しますが、しまいに役割を交代してしまい、主人に怒られるというお話。

主人が帰ってきた時に慌てて魚を持ったままお経を読んだり、経典の巻物で魚を切ろうとしたりするシーンはドタバタしていてとても楽しい♪ 万作・萬斎親子とても可愛かったです(*´▽`*)

能 「小鍛冶」。三条小鍛治宗近(ワキ)が一条天皇より御剣を打つよう勅命を受けますが、相槌を打てる者がいないのでお引き受けできないと断ります。相槌とは刀工の助手ですが、刀工と同等の力量を持つ者でないと勤めることができないのです。不思議な童子(前シテ)が現れ、中国や日本の名刀奇譚を物語り自分が相鎚を勤めようと約束して消えます。宗近は刀を打つことを決心し仕事の準備をしていると、稲荷明神(後シテ)が出現して相槌を打ち、素晴らしい刀を打つことができたという話です。

中入り後に鍛冶壇として使われる一畳台が持ち込まれました。周りに注連(しめ)が張られ、真ん中に直方体の鉄床(かなどこ)が置かれています。

狂言の最中にぽつりぽつりと雨がほんのわずか落ちてきていましたが、能の中入りあたりから継続的に降り始めました。観客各々が配布された雨ガッパを装着。継続的ですがまだぽつぽつと落ちる程度の弱い雨足。最後まで本降りになるなよ!と祈ります。

後シテの稲荷明神が現れました!頭にかぶる輪冠の上にキツネさんが逆立ちしています!可愛いぃ~~(*´▽`*)♡

中正面寄りの脇正面席だったので目付柱の陰になり、鍛冶を打つシーンは残念ながらよく見えませんでした。能では珍しい写実的なシーンと言えますが、ここは普段能を観る時と同じく心の眼で観ることにします。あぁーー、見えなくとも鍛冶を打つ音が聞こえてくるようです!

稲荷明神のダイナミックな舞は元気いっぱいでとても良かった!シテは宝生流の若き宗家、宝生和英さんでした。

雨には降られましたが、弱い雨だったのでそんなにはストレスを感じずに済み幸いでした。

昨年は寒くて観ている間にどんどん冷えてきて徐々に辛くなってきたのですが、今回も夜にはぐっと冷え込み風も吹いていたにも関わらず、昨年の教訓を生かしコートの下にさらにダウンを着て完全防備で防寒してたまたま雨ガッパ着ることになったおかげもあり全く寒さを感じなくて良かったです。薪のすぐそばだったのでほのかに火の温かさが届いていたせいもあるかもしれません。

昨年は嵐の直後だったので強風が吹いていて桜も終わりかけで桜吹雪がものすごく、それはそれで素晴らしい雰囲気でしたが、次回はぜひとも満開の桜の下でお能を楽しんでみたいと思っていたので願いが通じて良かったです。

昨年の夜桜能→奉納 靖国神社 夜桜能

皆様も来年の夜桜能を楽しんでみてはいかがでしょう?雰囲気は良いですし、あらすじの載ったプログラムやイヤホンガイドもありますので、お能が初めての方でもきっと楽しめると思いますよ!

奉納 靖国神社 夜桜能(第二夜)
4月2日(水)18:40~
@靖国神社能楽堂
舞囃子「三井寺」
狂言「宗八」
能「小鍛冶」

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今年は桜満開であります!キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
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能舞台の上に花びらが散り風雅。
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能舞台を囲むように桜の木が植えられている。舞台上から見てもキレイなのであろうな。
薪に御神火が灯され一層幻想的な雰囲気に。

若手能「道成寺」

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公演プログラム。黄色いのは国立能楽堂開場三十周年記念のシール。

国立能楽堂で催された「若手能」を拝見してきました。
「若手能」とは次代を担う若手能楽師が集う能楽若手研究会公演のこと。若手能楽師中心に配役され、国立能楽堂養成研修の修了生が数多く出演されています。

さて、今回は国立能楽堂開場三十周年を記念して大曲『道成寺』が上演されました。

『道成寺』は人気曲です。本日もほぼ満席でした。チケットはいつも争奪戦です(今回は友人のお力添えあり入手できました。ありがたや~(*’▽’*))。『道成寺』は能の演目の中でもかなり異色な部類に入りましょう。特色はやはり巨大な鐘の作り物(=大道具)が登場し、鐘入り、乱拍子などの他の能ではみられない特殊な演出が取り入れられていることです。

☆鐘入りとは・・・シテが落ちてくる鐘に飛び込む最大の見どころです。鐘の重量は80キロほどで、万一失敗すると大怪我の恐れもある命がけの場面です。シテは暗い鐘の中でたった一人で面と装束を替えます。鐘が上がると般若の面をかけ装束替えしたシテ(=蛇体)が現れます。

☆乱拍子とは・・・シテと小鼓が演じる最も難しい演じどころです。小鼓の掛け声と打音に合わせてシテが足拍子を踏みます。シテと小鼓の息づかいのみで間を合わせます。間合いが非常に長いため、舞台も見所も息を呑むような緊張感が張り詰めます。

乱拍子は何度見ても実に奇妙な舞だな~と思ってしまいます。シテが片足のつま先だけ上げてしばらく静止(これまたべらぼうに長い間)。小鼓の掛け声と息を合わせて足拍子。その繰り返し。シテと小鼓の一騎打ちな感じ。時々笛は入ります(大鼓はお休み)。字幕解説によると「白拍子が鐘楼への階段を登る様を表現」とありました。ふーーん、そうなのか。初めて知りました。今回、乱拍子は約25分でした。これは結構長い方ではないか?

鐘入りは、シテが鐘の内側に入り壁面に手をかけ足拍子を踏み、鐘が落ちると同時に飛び上がって鐘の中にすっぽり入ります。鐘より先にシテが落下することのないよう飛ぶのが良しとされています。できるだけ高く飛べばよさそうですが、鐘の天井に頭を打ってもいけないので飛ぶタイミングがとても難しそう。今回は非常にキレイに決まっていました!( ゚∀゚ノノ゙パチパチパチ

今回は観世流宗家の弟サンがシテを勤めました。52歳で若手??40、50は若手の世界なんでしょうか。なにゆえシテは養成研修修了生でないのか?せっかくだからシテも修了生にやってもらえばいいのに~と思っていたら、国立能楽堂で養成してるのはワキ方・囃子方・狂言方だけなんですね~(これまた初めて知った)。シテ方は間に合ってるということでしょうか。というよりシテ方以外が極端に不足しているってことなんでしょうね。

そういや観世宗家がいつのまにか改名していました(観世清和→観世清河寿)。キヨ君プログラムにいないよどーした?とものすごく探してしまったよ。ちゃんと後見で出ていました。なんでも渋谷の観世能楽堂を銀座に建て直すそうで。3月には能と文楽との競演、金剛流宗家との競演などいろいろ予定されてるみたいで・・・飛ぶ鳥落とす勢いですね!

それはともかく、今回お能が初めて&二回目という友人達も満足してくれたようです。能として典型的な演目ではないけど、見どころがたくさんあってお能好きはもちろん初心者でも十分楽しめる曲だとワタシは思っています。

3月は喜多流の道成寺を観に行きます!上掛り(観世・宝生)と下掛り(金春・金剛・喜多)では演出が大きく異なります。それも何度観ても飽きない所以かもしれません。次の道成寺はどんなのかな!?楽しみですっ!(*´▽`*)

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今回で二十三回目を迎える若手能。国立能楽堂開場三十周年を記念して若手能として初めて道成寺が上演された。

野村狂言座

本年初の能楽堂は、宝生能楽堂での「野村狂言座」。素囃子「神舞」、狂言「餅酒」「宝の槌」「岡太夫」と、新年を寿ぐ祝言色の強いラインナップ。お囃子つきでおめでたい舞や謡があったり、「岡太夫」は上演機会が少ない演目ですが(出演者の石田幸雄さん曰くあまり面白くないから。笑)夫婦円満で終わる話で、大爆笑の演目はなかったですが、ほんわか初笑いできました(*^_^*)
能舞台には松飾り、ロビーには樽酒と鏡餅が飾られていました。松の内はもう明けましたが、能楽堂では1月いっぱい正月飾りをする習慣になっているそうです。

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飛鳥山薪能「土蜘蛛」「附子」

【久々にお能の感想。蟹の写真が混ざっている理由とは!?】

昨夜は飛鳥山薪能に行って参りました。先週末は新宿御苑で薪能。薪能づいております。カミングアウトするとワタクシ薪能はあんまり好きじゃないです(笑) でもまあ今回は前から二列目の真ん中という最高の席だったし演目が良かったので結構楽しめましたよ~。

狂言の「附子(ぶす)」は演目解説で横浜能楽堂館長も仰っていましたが、かつては小学校の国語の教科書に載っていました。それが私と狂言の最初の出会いだったように思います。最近では「附子」を知らない若い人も多いですね。
今回は野村万作さん&萬斎さん親子が太郎冠者と次郎冠者で、これはもう安定の面白さです。客席が心地よい笑いに包まれつかみはOKです!

能「土蜘蛛」ざっくりあらすじ。
原因不明の病に伏せる源頼光の元に怪僧が現れる。その正体は土蜘蛛で、頼光は蜘蛛の糸を投げかけられ襲われるが応戦し、化生の者は逃げ去る。頼光が斬りつけた土蜘蛛の血の跡を追って、独武者と家来たちが土蜘蛛のすみかをつきとめ退治する。

この能の見どころは何と言っても、シテの土蜘蛛が白い糸を次から次へと投げ放つところでしょう。
昔は太くて短い糸を象徴的に投げていたのが、明治時代に金剛流で細い糸をたくさん投げる演出が考え出され、それが他流にも広がったのだそうな。

今回は「さゝ蟹(ささがに)」という小書(特殊演出)がついていました。これは狂言方の小書で、本来であれば間狂言は家来の役ですが、この小書がつくと蟹の精霊2名が登場し、彼らが手をチョキにして横歩きして出てきて、退治されるのが自分たちのことだと勘違いして恐れたり、蜘蛛の糸など自分たちのはさみでちょん切ってやればよい、などとユーモラスな会話が繰り広げられます。この小書はとても新しくて昭和になってから出来たものであるようです。

「土蜘蛛」自体が新しい曲で、作られたのは江戸時代だそうです。そう言われてみると、構成や演出は従来の伝統的な演目の型とはなにか違った新作な感じがいたしますな。

最初に登場するシテツレ「胡蝶」などは最初に出てきてすぐひっこんでしまう意味不明の謎の存在。
シテの「土蜘蛛」は前振りもなくいきなり登場し、観ている人にも何が何やらわからないミステリー感で期待が高まります(後場で世を乱すために近づいたと述べます)。
前シテ(怪僧=土蜘蛛)がひっこんでからようやくワキ(独武者)が登場とかイレギュラーな構成。まあとにかく人の出入りが多くて飽きが来ないです。

後場で、古塚を意味する作り物の引き回し(覆い布)が下ろされると、ジャジャーン!蜘蛛の巣デザインが登場。なにやらモダンな感じです。これを豪快に蹴破って土蜘蛛の化け物登場!赤基調のキンキラキンの装束に赤頭カッコエー!!
そして土蜘蛛と独武者一行が闘争する場面での舞働(まいばたらき)(=お囃子を伴う表意的な所作)も豪快に決まってました。

蜘蛛の糸、投げられるわ投げられる、何度投げられたことであろりましょう、大サービスです!いったいどこにあんなに糸がしまってあったのでしょう?投げる回数は特に決まっていないそうですよ。今回はたくさん投げた方じゃないでしょうかね。舞台上が白い雲海のごとく埋め尽くされたほど。ちなみに蜘蛛の糸は細い和紙を紙テープ状にした小道具が使われ千筋の糸と呼ばれています。

白い糸が投げられ放物線を描き宙に浮く様子に、客席から「おぉーーー」とか「わぁ、きれいーーー」という声が上がり(ほとんど花火を見るような反応ですネ)両手から放たれた糸がキレイに放射状に広がって決まったときには拍手喝采、能楽堂ではあまり見られない屋外の会場ならではの光景でしたね~。

土蜘蛛は上演時間も短いし、最初から最後までテンポ良く物語が展開し、観客を飽きさせないので、薪能にはピッタリな演目だと思います。船弁慶なんかも薪能向きですね。パイプ椅子にじっと座って寒さと戦っている時に静かな曲はちょっと辛いです(^_^;)

今回の演者紹介を眺めていたら昭和40年代生まれが3分の2を占めていました。同世代の活躍嬉しく思います。ほぼ40代ですが能楽の世界においては時代を担う若手世代なんですよね~。これは私も老け込んではいられない!(笑)
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狂言「朝比奈」での出来事

今日は新しい現場の初日で、初日というのは挨拶やら打ち合わせやらパソコン設定やらでなかなか忙しいもので、定時に帰れるかハラハラしましたが、何とか予定していた「野村狂言座」を観に行くことができました。ホッ( -o-)=з
で、最初にお断りしますが、今日は感想でも何でもなくどうでもいい話です(笑)
***
狂言「朝比奈」で主人公が図のような小道具を持っているんだけど、演技中に鎌の刃がポロリともげて脇正面のお白州にひらりと落ちた。
そのまま舞台は進行し、休憩時間になってグループで来てたおばさんの一人が拾いに行き友達に見せてニヤニヤしながら自分の紙袋に入れちゃった。別の女性グループが「返した方がいいんじゃないかなぁ・・・」とひそひそ(そりゃそうだ)。すると別の男性が出てきて関係者然とした態度で「事務局に返しますんで!」とおばさんからひったくっていった(アンタ誰?)。そのあと、野村裕基クン(萬斎さまの息子サン)が係員と一緒にやって来て鎌の刃を探している。役者さんが自ら回収に来るんだね(笑) (ちなみに朝比奈の役は裕基クンじゃなく深田博治さんでした)。おばさんグループの一人が「係の人が持っていきましたよ〜」と言うと裕基クン爽やかに御礼を言って楽屋に戻ったけど、あの人係の人じゃなくて単なる客だと思う。
公演が終わって客がいなくなってから回収に来ればいいと思うんだけど、あのタイミングで慌てて取りにくるのは、やっぱり記念に持って帰っちゃう客がいるからなんだろうね。みなさん、拾ったとしてもちゃんと返しませう!(そういう私も土蜘蛛の糸を持って帰ってきちゃったことあるんだけどやっぱ罪かな・・?(*-∀-)ゞ)
その後の演目が「連歌盗人」で「盗み」がテーマだった。それを意識して「刃」をくすねたのだとしたら、おばさんかなりの上級者だけどね!(・∀・)

asahina

狂言「川上」と人形浄瑠璃「壺坂観音霊験記」を観て思う夫婦の理想と現実

全く私事なのですが、本日で今の職場(立川)から撤退し、明日から別の現場(場所はヒミツ)に移ります。異動は最近になって突然言われたので、ウルトラ急ピッチでたんまりと抱えていた仕事を終わらせました。そしたら、何にもやることがなくなってしまい、身辺整理(機密書類のシュレッダーなど)も済んじゃって、仕事に関係あるデータも勢いできれいさっぱりパソコン上から消去してしまったので、今日は(仕事は)何にもできません!!というわけでヒマつぶしのため本日の投稿は長文です。おヒマな方は良かったらおつきあいください(笑)

なんかここ最近、行きたいお能の公演が全然なくてちょっと欲求不満になってます・・・(´-ω-`)

で、外も暑いし、家で有意義に過ごそうと思って、お友達から借りた狂言のDVDを観てたんですね。
10年近く前の映像なので、ひゃー、萬斎さまも誰も彼もみんな若いぃぃ~(しかも万之介さまがご健在・・(T_T)うるうる)、萬斎さまのアップが若すぎてなんだか恥ずかすぃとか一人で盛り上がりまくり(そういう自分がよっぽど恥ずかしい。笑)。

目当ては萬斎さまの「三番叟」だったのですが、最後に収録されていた万作さまの「川上」という狂言がむしろ一番印象に残り、これって5月に文楽で観た「壺坂観音霊験記」と表裏みたいな話じゃね?と思ったのでちょいとご紹介します。

「壺坂観音霊験記」あらすじ

沢市は眼病を患い盲目となったが美しい女房お里と仲睦まじく暮らしていた。
あるとき沢市はお里が夜な夜な出かけていくことを不審に思い外に男ができたのだと思う。
そこである夜秘かにお里の後をつけてみると、お里が沢市の目が治るように壺坂観音に願をかけていたことを知る。
沢市は妻の貞節を疑ったことを詫び、観音堂にお籠もりして祈りを捧げる決心をする。
お里は賛成しお籠もりの支度をするために一度家に戻った。その間に沢市はこんな自分がいては妻の足手まといだろうと自ら谷底に身を投げる。
家からお堂に戻ってきたお里は谷底に沢市の死体を見つけ、嘆き悲しみ自分も後を追い谷底に身を投げる。
谷底で眠る二人の前に観音様が現れる。二人の信仰心に報いるために観音様は二人を生き返らせ、沢市の目まで開けてくださった。
めでたしめでたし。

「川上」あらすじ

眼病のため10年前に盲目になった男が住んでいた。男には長年盲目の彼を介抱し連れ添ってきた妻がいた。
夫は川上という所にある霊験あらたかな地蔵に願掛けをすると目が見えるようになるという噂を聞き、妻に留守を任せて出かけていく。
地蔵堂に参詣した夫がお籠もりをしていると夢の中に神様が現れお告げを聞く。夢から覚めると目が見えるようになっていた。喜んで杖を捨て帰途につく夫。そこへ妻が現れる。目が見えるようになった夫に妻も喜び、どのようにして目が開いたのか尋ねる。
夫は神様のお告げを妻に話す。妻とは悪縁なので離縁すれば目が開くと神様が告げたと言うのだ。夫は目が見える方がいいので、別れて他の良い男と一緒になってくれと妻に言う。それを聞いた妻は怒り出し、絶対に別れない、離縁されるならいっそ見えない方がいいと責める。
根負けした夫は諦め、それならばこれまで通り連れ添おうと言う。すると夫の目が再び見えなくなる。二人して泣きながらこれも運命と嘆き悲しむ。こんなことなら杖を捨てなければ良かったという夫に、妻は「愛しい人、こちへ御座れ」と言い、「手を引いてたもれ」と言う夫の手を取り、二人並んで家へと帰る。

深い・・・。

「壺坂」の方は本当にええ話です。神仏は心根の美しい善い人間を救ってくれるというわかりやすいストーリーで、観た後は間違いなく幸せな気持ちになります。私もこの話が大好きです。

でも、実際の人生って「川上」みたいなもんだと思いませんか?何にも悪いことしてないのに病気になる、ずっと善い行いしてきたのに報われない、仲良い夫婦でもちょっとしたきっかけでエゴや本性が現れちゃう、神様は何にも助けてくれない、理不尽なことも受け入れていかなくちゃならない、なーんて全部現実にあること。

私も最初にこの話を観たときは、えーーー、全然救いがないじゃーん(´д`) と、モヤモヤしてしまったんですけど、改めて観てみると非常に考えさせられるというか、観る人の価値感や同じ人でも観る時の気分によって受け取り方が全然違ってきて、想像力をかきたてる深い話だなと思いました。夫婦愛なのか諦観なのか・・感じるものは人それぞれだと思います。

狂言にやはり盲目の人が出てくる「月見座頭」という演目がありますが、これも途中まで趣があるいい感じで話が展開するんですが、座頭が最後に突然、理不尽な意地悪をされるんですよね。これが今だったらすぐイジメだとか差別だという話になってしまうと思うんですが、本当のところはどうなんでしょう。作者の真意はわかりません。差別か、皮肉か、滑稽話か、受け取り方はまたそれぞれだと思います。

最近facebookでよく見られる、感動話に脊髄反射的にいいね!するような風潮は私は好きじゃありません。イイ話のウラには何かあるのでは?とつい考えてしまうので。イロイロ騙されて生きてきたので懐疑的思考が常となっているのカモ。天邪鬼でごめんね~~Ψ(+Φ∀Φ)Ψ

それにしても万作さまの演技は本当に素晴らしい。「川上」は万作さまの当たり役と言われているようです。盲人の演技も妻とのやり取りも秀逸ですが、一人芝居の部分が特に味わい深いです。万作さまの芸の真髄を堪能できる作品です。萬斎さまの「川上」は、おそらくあと20年は満足できないと思う、まだ観たことないケド(笑)

夜桜能@靖国神社 写真集

水曜日に奉納靖國神社夜桜能(第二夜)を観てきました。昼間、暴風雨だったので、予定通り行われるか心配しましたが、午後3時頃には雨も上がり、神社内の能舞台で無事上演されました。すっかり葉桜になると思っていましたが、桜の木もまだ頑張ってましたよ。お能の感想はまた後日書きます。とりあえず写真だけアップいたします。

国立能楽堂定例公演「頼政」

一昨日、国立能楽堂の定例公演にて。狂言「腰祈」能「頼政」鑑賞しました。お天気も良く、ランチ食べてお能を堪能して優雅な休日でございましたわ~オホホホ。(その後さらに文楽にもハシゴした。笑)

ちなみに今回お能が初めてのお友達もおりまして、修羅物(主に源平の武将が主役)にしては動きが少なめの演目だったので(シテが70歳すぎのおじいさんの設定のため)退屈しないかちょっと心配しましたが、みんなそれぞれに楽しんでもらえたようです。あまり動かないけど装束はゴージャスなキンキラキンでそれ見ただけでも能を観た!って感じです(笑)

能は金剛流という京都の流派で、ここ久しく観られていなかったんですが、先週末、式能で何年ぶりかで拝見。今回も続けて観られてラッキー☆ おシテは今井清隆さんという素敵なおじさまです。シテの場合、面をかけていてお顔が見えないのが惜しい。

狂言は和泉流の三宅藤九郎家で、おシテは三宅右近さん、野村萬さんや野村万作さんの従兄弟にあたります。あと息子さん二人も共演。ここの兄弟はイケメンですなぁ~(*´▽`*)

また、お能の地謡にイケメンがいたという情報もキャッチ!韓流スターのように前髪をたらしている人がいて、金剛流やるな~と変なところに感心してしまいました。

「頼政」は世阿弥作、語りが中心で謡の詞章がたいへん美しい曲です。字幕表示もあったので予習無しでもOKでした。平家物語にはまり始めている私にはとても面白かったです。謡は上級のものであと何十年は無理っぽいから(笑)、ぜひ朗読してみたい!